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その瞬間、男の人は体をこちらに向けたまま後ろ向きに走り出した。
「うあ？！」
その奇怪な走り方に思わず変な声が出る。
「失礼。お嬢さんはどうぞ、おかえりください。」
そういって男の人は私の前から消えようとした。
けれどそれはだめだ。この人は、伏黒君のところ、つまり野薔薇の方へ行こうとしている。野薔薇は私とは違って強気だから、きっとのこの人の前から撤退しようなんて思わない。
だから私は地面を強く蹴った。
「駄目、だよ。」
ぐんっと顔を近づけながら私はその人の懐に入り込んだ。予想外の出来事だったのだろう、その人は目を見開いて私の方を見た。
「そっちに、いくのは、だ、め。」
私は持っていた簪に力を込めた。
ざくり、と私の持つ簪が男の人のお腹を切り裂いた。血が飛び散り、私の手に付着する。その瞬間、燃えるような痛みが私の手を刺した。
「っ！！」
思わず声にならない悲鳴が出る。自分の手を見ると、私の手はどす黒い色に染まっていて、血が付着したのだろう袖口の辺りの服もジュウジュウと溶けて崩れていった。
「い、たい。」
「何故、今になってそのような愚行に走るのです。」
男の人は後ろ向きに走りながらそう言った。その人を追いかけながら私も答えた。
「あなたが、いくところには、私の、特別な人が、いるから。」
というか、と私は言葉を続けた。
「その走り方、やめ、て。気持ち悪い。」
さっきから予想外のことが多過ぎて、頭がクラクラする。その思いでそういえば、男の人は少し黙った。
「私、自分の背中がコンプレックスでして。」
男の人は真っ黒い目で私を見ながら言った。
「警告です。私の背中を見たら、それ以上の痛みで殺しますよ。」
その時、その人の背後に私は見知った人影を三つ見つけた。岩場から飛び降りながら、その人たちは私たちの方を見て声を上げた。
「あ、小松。」
「あ、兄者。」
「あﾞあﾞ！A！！」
虎杖くん、口の大きい呪霊、そして野薔薇だった。
「みっ、みっ、みっ、見たなぁああ！！？」
男の人は３人の方に向けてそう言い放った。
「え、誰なんかゴメン。」
「ゴメン兄者ァ！！わざとじゃねぇ！！わざとじゃねぇんだ！！」
虎杖君と呪霊が両手を上げ、同じポーズで男の人を宥めていた。けれど男の人は「殺す！！」と唸り、３人の方に向いた。つまり私に背を向けた。
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しょーどくえき - わ！すっごくおもしろいです！続きがとても楽しみです！頑張ってくださいね！ (2021年6月20日 16時) (
レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり - 今は死滅回遊ですよ!!!続きがとても楽しみです!!! (2021年5月21日 20時) (レス) id: 94bc23990d (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 無気力なおバカさん» コメントありがとうございます！この展開は読者様には不評かも、なんて考えている折だったので、これからの展開が楽しみというお言葉に救われました！更新頑張ります。 (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 糸野さん» コメントありがとうございます！スリルのあるなんて素敵な言葉をいただけて嬉しいです。更新が滞っていますがこれからもドキドキさせられるよう頑張ります！ (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
無気力なおバカ - 面白いです。これからの展開がすごく楽しみです。キャラ達の関係とかもすごく好みです。更新頑張って下さい！ (2021年1月2日 3時) (レス) id: 9900cccf42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柑橘 | 作成日時：2020年11月28日 17時
