52 ページ2
虎杖君と私たちは別れた。虎杖くんが外からこの領域に入ってきた上級呪霊の対応、私たちが元々の対象だったココの呪霊の対応だ。
こっちの呪霊は正直、そんなに強そうではなかった。けれどこの呪霊は領域内にある穴から顔を覗かせてはひっこめる、もぐらのような呪霊だった。
『芻霊呪法 共鳴り』
野薔薇が自分の呪力で浮かせた釘を地面に打った。瞬間、領域内のあちこちの穴で小規模の爆発が起こり、呪霊を追い詰めていった。逃げた呪霊はまだ攻撃が及んでいない穴へと逃げた。しかしその先には伏黒君がいた。
バガッと鈍い音が鳴った。伏黒くんが穴ごと呪霊を叩き潰した音だ。けれど同時に私の頭上の穴から呪霊が顔を覗かせた。
私はそこに向かって、簪を振るった。
確かに穴には当たったけど、間に合わなかった。呪霊はすぐに別の穴から顔を出した。
「しっぱい。」
私は簪についた土埃を払いながら呟いた。
「もぐら叩きの要領でいいのよね?」
野薔薇が聞いた。
「あぁ。そのまま出口を潰し続けてくれ。多分反撃はない。」
伏黒くんは剣を肩に置きながらそう言った。
「限定的とはいえ、術式範囲が広い分本体に攻撃力がないってこと?」
「あくまで多分な。」
野薔薇の問いに伏黒君はそう答えた。現状、すべて憶測でしか物事を語れない。けれどこのまま穴を潰していくことだけが私たちにとって最優の策だ。なら、私は…….。
もう一本の簪に触れた瞬間、誰かに腕を掴まれた。
「え。」
自分の腕を見れば、後方から現れた黒い穴から二本の太い腕が伸び、私の腕を掴んでいた。
「あ。」
「A!!」
「小松!!」
伏黒くんと野薔薇が私の方に振り返り、手を伸ばした。
手を、取らなきゃ。そう思い私も片腕を伸ばした。近いのは野薔薇の方だったから、私は野薔薇を見た。ああでもこれは、間に合いそうにないな。
私はへらりと笑った。
「待って、る。」
闇に飲まれる瞬間、野薔薇の顔が見えた。野薔薇は泣きそうな顔で私を見ていた。
1323人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しょーどくえき - わ!すっごくおもしろいです!続きがとても楽しみです!頑張ってくださいね! (2021年6月20日 16時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり - 今は死滅回遊ですよ!!!続きがとても楽しみです!!! (2021年5月21日 20時) (レス) id: 94bc23990d (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 無気力なおバカさん» コメントありがとうございます!この展開は読者様には不評かも、なんて考えている折だったので、これからの展開が楽しみというお言葉に救われました!更新頑張ります。 (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 糸野さん» コメントありがとうございます!スリルのあるなんて素敵な言葉をいただけて嬉しいです。更新が滞っていますがこれからもドキドキさせられるよう頑張ります! (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
無気力なおバカ - 面白いです。これからの展開がすごく楽しみです。キャラ達の関係とかもすごく好みです。更新頑張って下さい! (2021年1月2日 3時) (レス) id: 9900cccf42 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:柑橘 | 作成日時:2020年11月28日 17時