母親 ページ28
【胡蝶side】
「胡蝶姉様!」
ハッとなり目が覚める。心配そうな顔をして私を見つめるのは百華の一人。
辺りを見回してみると、ここが救護部屋で私は布団に横たわっていることが分かった。
…………さっきのは……夢…… 大きくため息をついて起き上がる。痛むところはあるけれど、さっきより随分ましだった。
「それより、胡蝶姉様。好い人でもいるんですか?」
何。その気の抜けた質問は。まだ、鳳仙は死んでいない。今すぐにでも行かないといけないのに。にっこりと微笑む彼女は話を続ける。
「手を伸ばして、行かないで。って魘されてたみたいで。………………………………行きますか?」
先程の笑顔が一瞬で消え去って、不安そうな顔になる。今にも壊れてしまいそうな。
「月詠を一人で戦わせる訳にはいかぬ。」
私の言葉に、そうですよね、頭にここにいさせろって言われてたんですけどね。彼女はそう返した。今度はイタズラを成功させた子供みたいに笑っていた。
彼女のコロコロ変わる表情に緊張が解れて、月詠の元へと向かうことが出来た。
「貴様の母親49人。」
日輪を連れ出そうとする晴太にかけたその言葉に、続くように私も口を開いた。
「もう一人追加でお願いしんす。」
「月詠!!胡蝶!!」
日輪と目があって、その瞳は相変わらず一本の強い芯をもっていた。……いや、ここにいる多くの人間が。
謀反を起こす私達に向けられた、鳳仙の視線に答えるように月詠が言葉を紡ぐ。呆れたような声色で、血に濡れた銀色の鈍い光の事を話す。
「この大ボラ吹きめが!!」
その言葉と同時に投げられたクナイは、何処にも刺さらなかった。その姿に多くの人が目を見張る。
「……ホラなんざ吹いちゃいねェよ。太陽なら上がってるじゃねーか。そこかしこにたっくさん。」
血に濡れた顔で不敵に笑って立ち上がった奴……銀時は床に刺さっていた私が貸した刀を握って、構えた。
「まぶしくて眠れやしねェ。」
床に転がる煙管を見て銀時と言い争っていた月詠は鼻をならす。
「何の話だ。そんな汚い煙管、覚えがないわい。わっちの煙管はそんな安物ではない。」
その言葉を合図に飛び降りる私達。傷に悪そう。
「ブランドもの美恥。
必ず買ってもらおうじゃない。
「地上でな。」
月詠はクナイを、私はさっき借りた刀を。構えて一斉に鳳仙へ攻撃を仕掛ける。受け止められても諦めずに。自分の中の芯が決して折れてしまわない様に。
66人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きなこ(プロフ) - 匿名さん» コメントありがとうございます!自己満足だった小説を読んで頂いて、こうやって褒めて頂いて、嬉しいという言葉じゃ足りない位です!更新がなかなか出来なくてごめんなさい!精一杯頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (2019年1月13日 13時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - もうこの小説大好きです!シリアスさの中に恋愛要素って...技術が素晴らしすぎると思いました!情景描写も心理描写も端的で分かりやすく、人間味溢れる銀魂っぽくて素敵です!もうこの小説好きすぎる...!頑張って下さい! (2019年1月12日 17時) (レス) id: 3ba3df2a95 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - ヒジキさん» ありがとうございます!そういって貰えて嬉しいです!! (2018年8月2日 18時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
ヒジキ(プロフ) - 面白いです!!これからも頑張ってください! (2018年8月2日 1時) (レス) id: 127c0c77c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きなこ | 作者ホームページ:https://twitter.com/Kinako__uranai
作成日時:2018年7月18日 13時