story16 幸せ ページ17
【総悟side】
道場で剣を振っているはずのアイツの所へ向かった。
「土方さん。一手ご教授してもらってもいいですかね。」
「近頃姉上の周りをかぎまわらせてるようで。一体どういうつもりなんですかね。これ以上姉上の幸せぶち壊すのはやめてもらいてーんですが。」
竹刀と竹刀がぶつかり合う音が響く。どちらも手加減をせずに剣を振るう。
「転海屋。不逞浪士と大量の武器を闇取引している嫌疑がかかってる。密輸で仕入れた武器を高値で売りさばいてやがる。ありゃ闇商人だ。」
剣がぶつかって、音が聞こえなくなる。そんな中だから、ヤローの声が心に残った。
「おめーの姉貴の旦那は、俺達の敵なんだよ。」
平然と声色も、顔色も変えずに俺に言ったヤローにムカついた。だから、剣を押した。
「土方さん。攘夷がどんな武器もとうと、俺達が叩き斬りゃいい話じゃねーですか。清濁併せ呑む位の器量がなきゃ商売やってけやせんよ。
」
俺達が、俺が頑張れば姉上が幸せになってくれるのなら、喜んで剣を奮える。
「それに、商売はともかくあの人の人柄はアンタも見たでしょう。あの人は心底姉上に惚れてますよ。きっと幸せに……」
確かに、俺達の敵だ。そんな奴が、姉上と結婚するのは何だか納得行かない。だが、惚れてくれてるんならソイツに任せてェ。
「そいつァ。俺に奴を見逃せといっているのか。」
「アラ。そう聞こえやせんでした?」
こいつだって、伊達に、戦で戦って来てはいない。勘はあるはずだ。きずきたくないのか。一応の確認なのか。
「今のは、聞かなかったことにしてやる。気が失せた。あとは一人でやりな。」
背を向け出ていこうとするヤローに、凄い勢いの竹刀を突いた。
「まだ、話は終わってませんぜ。」
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作者名:きなこ | 作者ホームページ:https://twitter.com/Kinako_uranai
作成日時:2018年2月5日 13時