9話 ページ10
でも、そう。型にはまらないというか…
《少なくともAが卒業するまで五条家との貸し借りとか、あんまり深く考えるな。教師は生徒を導くものなんだから、ノープロブレム!》
五条は
『ぇえ…?』
これには、思わずAも苦笑い。
格好良く言えば“寛大”だろうが、彼の言葉を訳すと“使えるものは使え”というふうになる。
つまり“頼れ”でなく“使え”だ。これではまるで五条家は如月家のスポンサーになりますと言っているようなもの。
伊地知さんには聞かれてしまったけど、“窓”には皆縛りがかかっていると言うし、別にこれが知られたって、せいぜい上にどっぷり目をつけられるだけで特に困りゃしない。
ただあまりの甘さに『いいのかそれで』と周りの人間まで放心してしまうのだ。
“上”という立場は祖母だからこそなり得たもの。御三家でもない、お祓い中心だった如月家は紛うことなき紛い物だった。その認識は何百年経った今でも、なくなることはない。
ふと空が暖かい色に変わって、タイムリミットが迫っていることに気付く。
「…!Aさん」
『っあ、はい……?』
伊地知さんに端末を渡された。送り主は意外にも七海さんで、呪詛師を捕まえたのは七海さんだったらしい。メールで事件の詳細が大まかに書かれていて、写真もあった。
「これなんですが、何処かで見たことがあって…」
そう言いながら伊地知さんが写真の一つを拡大する。
赤に紛れる黒い線。恐らく墨であろうそれは天井を覆うように咲き乱れている。
『………花?』
タブレットを見つめる2人に、影がかかった。
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作者名:雨が好きな人 | 作成日時:2023年1月11日 18時