17話 ページ18
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__ピロン。
昼食時、広い食堂に軽快なメールの着信音が小さく鳴った。
画面を見ると、伊地知から例の墨絵と10年前の事件の資料の比較が送られてきていた。
当時はただの事件として処理されたらしいのだが、一つ不可解なことが残っていたと言う。
…それは部屋の壁、天井、床に墨で描かれた鈴蘭が広がっていたこと。
当時は絵に呪力の痕跡はあったものの、その痕跡を辿って呪霊は討伐されたため解決したとみなされていたらしい。
『(親玉確定演出きたなこれ)』
間違いなく存在する親玉を想像して、Aの目からハイライトが消えた。
「誰から?」
『親戚』
伊地知に返信を送ろうとすると、画面を見ようと仰反る乙夜。今度こそ見られたらアウトなので、Aは慌てて画面を伏せる。
『個人情報!閲覧禁止でーす』
誤魔化すAにケチ、と口を窄める乙夜。向かいに座っていた烏は呆れた顔をして、「早く食わんと時間なくなるで」と自身の食器を返すべく立ち上がる。
『烏食べるの早いね。私たちまだ3分の1は残ってるのに。』
「箸の使い方がなってないんやろ」
『んなっ…私が食べているのはオムライスであって、使い方がなってないとしたらスプーンの使い方だろ!?』
「なんでそこでキレんねん」
必死の抵抗に、情緒不安定かと顔を顰めた烏は今度こそ返却口へ向かう。
乙夜はそれを見送ると、パクパクとオムライスを口に運ぶAに視線を移した。彼は烏とAが言い合っているうちに食べ終わったので、彼女が食べるところを見る余裕があるのだ。
そんな乙夜の視線に構うことなく、否、構う暇もなく口に食べ物を詰めていくA。
「(あ、今3口分一気に入れた)」
もっきゅもっきゅ、ごくん。
「………………………」
『………なに』
その日、Aとの食事権をかけた腕相撲大会があったとか、なかったとか。
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作者名:雨が好きな人 | 作成日時:2023年1月11日 18時