16話 ページ17
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三日間の体力テストが終わり、一次セレクションが始動した。
Aのすることは変わらず、スポドリやタオルなどの補充、清掃と呪霊討伐で、現在廊下を清掃中。
毎晩する電話で同期に話す話題はまだ底をつかない。今日は何を話そうか、と業務をこなしながら考える。
まずは一次セレクションが始動したこと、それから…A自身の変化といえば友人ができたことであろうか。
「__お、A!」
例えば、目の前の2人。
御影は言わずもがな、そして意外にも凪も御影に執着している。2人は切っても切れない関係であるということは、知り合って間もないAでもすぐにわかった。
『試合どうだった?』
「え、見てねぇの?」
『勝ってんだろーなとは思ってたけど、見てる暇がなかったもんで』
キョトン、と目を丸くする御影にAは疲れた表情を浮かべて肩を回す。
彼らが試合をしている間、ポツンと誰も使わない廊下が現れるので、彼らが試合をしている間に某便利ワイパーで直線廊下を全力疾走していたのだ。
Aの左手には、4級何十匹分の呪力を放つ某ワイパーが握られている。
今ここに呪霊が視える人間がいたなら、その人物は吐き気を催し即座に回れ右して逃げていたことだろう。
彼らが視えない人間で良かった。
そんなことを考えるAの視線は御影を通り、肩に顎を乗せる凪に向いた。再度『どうだった?』と問いかける。凪は目を瞑ったまま、「疲れたー」と一言溢して身を捩った。
「ねー、眠いよレオ」
「あ、すまん凪。A!明日こそはちゃんと見てくれよ!」
『あーい』
フィールド外から見た感想も聞きたい御影は間延びした返事をするAに「絶対だからな!!」と念を押して横を通り抜けた。
___くちゃり。
「…__、?」
違和感を感じた凪が振り返る。
当たり前だが、そこにはおやすみ、と穏やかに手を振るAだけ。
…きっと、気のせいだ。
そうなんだとわかっているはずなのに、扉が完全に閉じるまで、凪は縫い付けられたようにAから目を離せなかった。
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作者名:雨が好きな人 | 作成日時:2023年1月11日 18時