90松 ページ39
すぐに否定しないという事は図星なのだろう。眉を下げて俯くAは返す言葉も無いらしい。
これでやっと爺さんがとった行動の意図がわかった。多分爺さんは、俺がAの様子を伝えた時点でAが何に恐怖しているのか察したのだろう。裏口から大きな音を立てて泥棒じみた入り方をしたのは、Aの反応を見て自分の考えに確証を得たかったからだと思う。
これで大体の状況は理解できた。後はどう対処するかだ。
「……A、今一人になったら危ないんじゃないの?もしかしたらあのおっさん…Aのお父さんが乗り込んでくるかもしれないんでしょ?」
「………でも、私の杞憂かもしれませんし…」
「部屋の隅で俺の声が聞こえないぐらいに怯えてた癖によく言うよ」
「…………」
大方、巻き込みたくなかったのだろう。Aの事だから自分一人でなんとかしようと思って誰にも何も話さず対処しようとしていたに違いない。
だけど、もしさっき帰って来たのが俺と爺さんではなくあのおっさんだったら、Aは冷静に対処できていただろうか?考えるまでもない。最悪の状況になってる可能性だって有り得たかもしれない。
これで此処に留まる明確な理由がハッキリできた。もうAを一人にして帰るなんて事は出来ない。今まで帰らない選択をしていた俺の勘は間違っていなかった。
「俺、これが解決するまで帰らないから」
「!」
「何その驚いた顔、当たり前でしょ。今の状況で俺が帰ったらどうなるかぐらいわかるよね」
「だ、駄目です!危ないかもしれないんですよ!」
「はい今墓穴掘ったねー、危ない目に合うの前提なんだねー、その危ない状況の中であんたを一人にする方が無理だからねー」
「…っ、大丈夫です、本当に」
「大丈夫の根拠は?」
「…………」
まただんまりか。いい加減認めてほしい、一人じゃ解決できないんだって事を。
気付いてよ、周りにはAを心配に思っている人間が沢山いるんだって事を。
巻き込みたくない気持ちは痛い程わかる。かつての俺がそうだったから。
だからAだって、今の俺の気持ちがわかる筈だ。助けを拒み続けていた俺を、それでも助けたいって強く思ってくれていたんだから。
……だから一言助けてって言ってよ。言ってくれれば、いくらでも手を貸すから…。
――お願い…、俺の気持ちを受け入れて…
228人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
渚(プロフ) - 月花さん» 返信が遅れてしまいすみません。1でもコメントしたのですが、Azpainter2というPCソフトを使っています (2020年2月3日 20時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
月花 - 絵上手いですね。どうやってらんですか? (2020年2月3日 19時) (レス) id: a919e6fca7 (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 森田菜々子さん» ご要望にお応え出来ず申し訳ございません…。今後ともよろしくお願いいたします。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: d823623ddd (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - すいません;最新頑張って下さいね。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: e772f145ae (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 森田菜々子さん» えっと、それは短編小説のリクエストでしょうか?それですと申し訳ないのですが、小説のリクエストは受け付けておりませんので…。 (2018年9月4日 18時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:渚 | 作成日時:2018年1月14日 17時