75松 ページ24
「寝る間も惜しんで仕事をして、只でさえ忙しかったのに私の為に色んな場所に連れて行ってくれたり、健康管理を徹底して視てくれたり、お陰で私は健全に成長する事ができました。…でも、祖父母は大分高齢だったので、段々と介護も必要になっていきまして…」
Aもそれなりに手伝いはしていたみたいだけど、所詮は子ども。出来ることには限りがある。
そして、育児に仕事に介護。それらを一人でこなしていくには大人でも限界がある。
「その苦労が祟ったのか、母は私が中学生の時に倒れてしまって…」
過労死だったらしい。
親としての責任、世間からの注目、仕事のストレス、祖父母の介護、その他諸々の重圧が重なった結果、自身の管理が厳かになってしまったのだという。
その後Aは祖父母の元に引き取られたが、まだ学生だったAが一人で二人の介護なんて出来る訳もなく、祖父母は施設に行くことに。この時は高校生で、ここからAの一人暮らしが始まったらしい。
そして三年前に祖父が亡くなり、その後祖母も…、昨年の事だったという。
「とまぁ、こんな感じですかね。他に気になる所はありますか?」
「………いや…」
ならこの話はここで終わりと言うようにAは畳に広げられてたアルバムを片付け始めた。あんな話をした後だというのに、全く気に留めていないように。
……辛くないのだろうか…。
俺から聞いた事だけど、こういう過去をぶり返されたら普通は嫌というか…、悲しいとか寂しいとか、そういう風に思わないのだろうか…。
「一松さん」
「え、なに?」
「私の事、可哀想だって思いました?」
少しだけムスッとした表情がそこにあった。
「……可哀想っていうか…、壮絶だとは思ったよ」
「確かに世間から見たら壮絶かもしれませんけど、私は恵まれてる方ですよ」
Aは手にしたアルバムに目を向け、その表紙を優しく撫でた。
「世界には周りと色が違うせいでもっと苦労している人だっているんです。酷い所だと殺される事だってあります。でも私は差別される事もなく友達だってそこそこいますし、親からの愛情だって目一杯もらいました。お金も残してくれて、不自由なんて何も無い。可哀想な事なんて何一つ無いんです」
だから、母の努力が無駄だったみたいに思わないでほしい。
と、彼女の目がそう言っているように見えた。
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渚(プロフ) - 月花さん» 返信が遅れてしまいすみません。1でもコメントしたのですが、Azpainter2というPCソフトを使っています (2020年2月3日 20時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
月花 - 絵上手いですね。どうやってらんですか? (2020年2月3日 19時) (レス) id: a919e6fca7 (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 森田菜々子さん» ご要望にお応え出来ず申し訳ございません…。今後ともよろしくお願いいたします。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: d823623ddd (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - すいません;最新頑張って下さいね。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: e772f145ae (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 森田菜々子さん» えっと、それは短編小説のリクエストでしょうか?それですと申し訳ないのですが、小説のリクエストは受け付けておりませんので…。 (2018年9月4日 18時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渚 | 作成日時:2018年1月14日 17時