72松 ページ21
単純な疑問に、Aの肩がピクリと動いた。
俺の言葉の影響か、レナちゃんと達也もAの父親の写真を探したけど、一枚もそれらしい人物は写っていない。
「……、父は私が小さい頃から遠方で仕事をしているので、なかなか家に帰ってこないんです」
「エンポウって?」
「遠い所って事だよ」
「単身赴任ってやつ?」
「まぁ、…そんなところです」
あ、これ嘘だって思った。
二カ月間過ごして分かった事だけど、Aは何かを誤魔化したりちょっとした嘘を吐く時、嘘の中に本当の事を混ぜて話す節がある。前におそ松兄さん達と電話してた時も同じような話し方をしてたのを覚えてる。
すごく分かりにくいけど、さっきのは分かりやすかった。
だって、言葉を濁しながら一瞬だけ目を伏せたから。
本人は無意識かもしれないけど。
「おねえちゃん、パパいなくてさびしくない?」
「…ちょっとだけね。でも平気だよ」
「なんで?」
「だって今は一松さんがいるし、こうしてレナちゃん達も遊びに来てくれるもん」
だから寂しくないよ。と、Aはニコリと笑った。
あぁ、また隠した…。
「レナもおねえちゃんといるとたのしいよ!」
「そっか、お揃いだね」
「うん!レナね、おねえちゃんとしゃしんとりたい!」
「お、いいね!皆で撮ろっか!スマホでいいよね」
「うん!おにいちゃんこっちね!」
「は?なんで俺まで。二人で撮ればいいじゃん」
「ノリわるいよーおにいちゃん」
「そんなだとモテないぞー」
「うっせーし余計なお世話だし!」
「ほら、一松さんも」
え、俺も?
…と言いそうになったけど、言うだけ無駄だと思って素直に頷いた。
――――…
「おじゃましましたー!」
「したー」
夕方、雨が強まらない内に帰った方が良いという事で、レナちゃんと達也クンは此方を振り返りつつ手を振りながら帰っていった。
俺とAは玄関先でそれを見送って、二人だけの空間になる。
「そういえば一松さん、私の部屋入ったんですよね?」
「え、今それ掘り返す?……悪かったって思ってるよ…」
「いえ、入った事自体は気にしてないんです。ただ…」
「ただ?」
「アルバムを出す時、押し入れの中がぐちゃぐちゃになってて、あれって誰が」
「申し訳ありませんでした」
「…、明日コンビニに行って写真をプリントしてくるので、その間に洗濯物洗って干しといて下さいね」
「…………ワカリマシタ」
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渚(プロフ) - 月花さん» 返信が遅れてしまいすみません。1でもコメントしたのですが、Azpainter2というPCソフトを使っています (2020年2月3日 20時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
月花 - 絵上手いですね。どうやってらんですか? (2020年2月3日 19時) (レス) id: a919e6fca7 (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 森田菜々子さん» ご要望にお応え出来ず申し訳ございません…。今後ともよろしくお願いいたします。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: d823623ddd (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - すいません;最新頑張って下さいね。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: e772f145ae (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 森田菜々子さん» えっと、それは短編小説のリクエストでしょうか?それですと申し訳ないのですが、小説のリクエストは受け付けておりませんので…。 (2018年9月4日 18時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渚 | 作成日時:2018年1月14日 17時