68松 ページ17
「こんにちはー!!」
「ッ!?」
突然の子どもの声に驚いて跳ね起きた。
何事かと思い声が聞こえてきた玄関に向かうと、引き戸の磨りガラスの向こう側に中と小の影が写っていた。
…もうこれだけで誰が来たのか大体予想できる。
引き戸を開けてやれば、案の定そこにはスイカ割りで知り合ったクソ餓鬼の達也と妹のレナちゃんが傘を差して立っていた。
「こんにちは!」
「……こんちは。どうしたの急に」
「あそびにきました!」
「…」
何故いま?という言葉は飲み込んだ。期待に満ちた笑顔のレナちゃんが眩しいから。
だが生憎その期待に答えられそうな人物は今不在だ。さて、どうしたもんか。
子どもの扱いは苦手だけど、雨の中わざわざ来たのを帰らせるのも気が引ける。Aが出掛けてから暫く経つし、もしかしたらもうすぐ帰ってくるかもしれない。
その結論に至った俺は、できるだけ幼女を怖がらせないように口角を上げ二人に向き直った。
「…今、Aいないけど、もうすぐ帰ってくるかもだから、上がる?」
「はい!おじゃまします!」
「…お邪魔します」
傘をたたんで家に上がる二人を居間に通そうとする。
でもその前に俺の横を小さな影がドえらい勢いで通りすぎた。
「お姉ちゃんのアルバムみたい!」
「はっ!?ちょ、ちょっと!」
「レナさがしてくるー!」
呆気にとられてる間にレナちゃんは脱兎の如く駆け出し、あっという間に家の奥へと姿を消してしまった。
一方達也はというと、レナちゃんそっちのけで一人で居間に入って適当に寛ぎ始めてしまった。暴走する妹を止める気は無いらしくテレビを付けてガン無視。おい長男しっかりしろよ、長男ってのは碌な奴しかいねぇのか。
仕方なく俺だけでレナちゃんが走り去っていった方へと向かう。
廊下に出ると、手当たり次第に物色しているのだろうか家中のドアというドアが開け放たれてそのままになっていた。
でもどの部屋の中も散らかしてはいないようで、物色したような痕跡も無い。
アルバムを見たいと言っていたし、レナちゃんの中で目的の部屋は絞られているのかもしれない。
ここでハッとした。
アルバムがありそうな部屋といえば、思い当たるのは一つしかない。
まさかと思いその部屋の前まで向かう。
ドアは開けっ放しになっており、中からはレナちゃんが何やらはしゃいでいる声が聞こえてきた。
この二カ月間、決して足を踏み入れた事のない、Aの自室。
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渚(プロフ) - 月花さん» 返信が遅れてしまいすみません。1でもコメントしたのですが、Azpainter2というPCソフトを使っています (2020年2月3日 20時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
月花 - 絵上手いですね。どうやってらんですか? (2020年2月3日 19時) (レス) id: a919e6fca7 (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 森田菜々子さん» ご要望にお応え出来ず申し訳ございません…。今後ともよろしくお願いいたします。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: d823623ddd (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - すいません;最新頑張って下さいね。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: e772f145ae (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 森田菜々子さん» えっと、それは短編小説のリクエストでしょうか?それですと申し訳ないのですが、小説のリクエストは受け付けておりませんので…。 (2018年9月4日 18時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渚 | 作成日時:2018年1月14日 17時