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「では、私が」
しるべくんがまだ自己紹介をしてない子を見回して言いかけると、糸目の女の子がすっと手を挙げた。
「
丁寧な物腰で夕鈴ちゃんが名乗り、私達を見回す。
「よろしくお願いします」
「うん、よろしくね!夕鈴ちゃん」
そう言って呼びかけると、彼女は微笑みを湛えたまま私の方を向いて、「はい、咲楽さん」と笑みを深めた。
名前を呼んでもらえた感動から綺麗で丁寧な子だなあ、なんてにやにやしてたら、狩くんが「んじゃあ、」と眼鏡の子に視線を向けながら口を開いた。
「最後はぁ、そこのお前ねぇ」
眼鏡くんは狩くんの声にビクッと反応してから、ちょっと面倒くさげに名乗った。
「や、
後半にかけてだんだんと声のボリュームが小さくなっていった。乱烈くん、かあ。確かにあんまり聞かないけど、すっごく変!とは思わないけどなあ。そう思って、思った通りのことを言った。
「よろしくね!でも、乱烈くんの名前そんなに変じゃないと思うよ」
本当に思ったことを言っただけなんだけど、本人にはそう聞こえなかったのかな。彼は眉を顰めて私を見た。
「いや、そんなお世辞とか要らないんで……」
「そんなんじゃないよ!ホントに──」
「いやいや、本当にフォローとか、大丈夫なんで」
乱烈くんは鬱陶しそうにそれだけ言うと、床を見つめて黙ってしまった。余計なことしちゃったかな……?
不安になる私を見かねてか、Aくんが小声で話しかけてくる。
「あァー……まあ、気にすんなよ、咲楽。誰にでも失敗はあるって。お前に悪気は無かったわけだし。だろ?」
「う、うん。そだね、ありがとう。……えっと、ともかく、これで全員が自己紹介したわけだし」
Aくんの心遣いに感謝してから、私はみんなに向き直る。
「えっとー……これからどうしよっか?」
「お、おお……そうだな。とりあえず、適当に散策でもしてみるべきなんじゃないか?」
輝月くんがそう言えば、「そうだね」としるべくんが頷いた。
「でも、ちょっと待ってくれる?」
「ん?どしたの?」
私が聞くと、しるべくんは「あのさ」と更に続けた。
「みんなこれ、本当に信じてると思う?今までずっとただの夢だと思ってたし、正直今でも覚めれるって思っちゃわない?」
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