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目の前に、婚姻届と、指輪。
スーツ姿の、彼。
「遅くなったけど、これ。結婚指輪じゃなくてさ、婚約指輪。」
『………ありがと、』
それを手に取った時、
"後悔しない？"と、誰かが囁いた。
(そんなこと言ったって、私には、もうこの選択肢しかないの)
キラキラと、ダイヤモンド。
内側には、私の名前と彼の名前。
あぁ、本当に、結婚するんだね。私たち。
式場も決まってた、
ドレスだけがどうしても決まらなくて
いつまでたっても決まらなくて。
「俺はどんな君でも綺麗だと思うけど」
そう笑ってくれる彼には申し訳ないが、
私には他に見てもらいたい人がいるのだ。
私は私は、
あの人に、可愛いって言われたいんだよ。
だから、廉の好みそうなものを沢山探した。
これだったら、あっちの方がいいのかな、
何度も見比べて、
結局、見て貰えないのに
そう思ったり
そんな事考えてたら、
メイクさんがこっちに来てくれて、
私が思うことを沢山伝えると
彼が絶対可愛い！と思ってくれるような
ドレスが見つかった。
見てもらいたいな、どうしても。
あのカフェに行けば、会えるのかな。
あれから何度か足を運んで、
友達である店員さんに
色んな話を聞いて。
この空白の数年間のことも、
最近のことも。沢山。
それから、結婚式の日にちも伝えた、
来て欲しいなんて言えない。
きっと来てくれたら、泣いて離れたくない
なんて言うと思うから。
それに、小さな結婚式だから。
披露宴もやらないし、
招待するのも家族と友人数名だけ。
私にとって、結婚式などただの式典にしか過ぎないのだ。
廉以外とするなんて、……………なんて、
いつまでも、未練がましい私に
自分自身が思わず嫌気をさしてしまった。
結婚式まで、後、2ヶ月。
『……………会いたいな、』
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作者名：yuma | 作成日時：2021年3月2日 0時
