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こんな、こんなにも幸せなことがあっていいのか。目の前の彼女から告げられた言葉を素直に呑み込めないのはそれがあまりにも幸福な言葉だから。俺がずっと、欲しかった言葉だったから。
「……私、光来くんのことが好きだよ。」
穏やかなその笑顔に、伝えられたその言葉に、心臓が張り裂けそうなくらい痛くなる。少し照れくさそうに俺から視線を外して、彼女は微笑みを浮かべたまま前を向いた。「遅くなっちゃってごめんなさい。」と一つ断りを入れた彼女が続ける。
「だから……だからね、もしよかったら私と、」
「待て。……それ以上は駄目だ。」
Aの言葉を制止すれば、彼女は不意を突かれたようにこちらに顔を戻した。その続きの言葉はどうしても俺から言いたい。そんな俺の意図をなんとなく理解したのか、そうではないのか。Aは淡く桜色に染まった顔を困ったように崩して眉を下げた。
まっすぐに彼女の目を見据える。緊張しているのか、口を真一文字に結んでいるその様子がどうしようもなく愛おしい。そんな彼女を見ていると自然と頬が緩んだ。
1年間溜め込んできた物を全て吐き出すように言葉を送る。ずっと、この言葉を伝えたかった。
「A……俺と付き合ってくれ。」
涙の浮かんだ瞳が、穏やかに細められる。
「よろこんで。」
溜まっていた涙がこぼれて頬を伝う。本当に、本当に……現実なんだよな、これ。まさか俺夢見てんじゃねえか?……と思って思いっきり頬をビンタしてもちゃんといたくて、目の前のAは「え、何で!?」と慌てている。そうか……現実、なんだな。
理解すると同時に堪えきれないほどの幸福感が押し寄せてきた。試合に勝つとかとはまた違う、全然違う何か。その感情のままに、不可思議な俺の行動に戸惑っている目の前の彼女の腕を引いた。
「わっ、」と小さく零して体制を崩したAを抱きしめる。腕の中に納まって「あの、光来くん、」と声を上げる彼女に回した腕に更に力を入れた。
「絶対幸せにする。……約束する。」
「……えへへ、よろしくお願いします。」
Aの腕が俺の背中に回される。ずっとこの時間が続けばいい……あぁいや、バレーが出来ないのは困る。バレーとAさえ居ればもう何だっていいし、何もいらない。今はそれくらい幸せだ。
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ましゅ(プロフ) - さいっこうに最高なお話でした。2人のよさも可愛さもギュッと詰まってて、光来くん〜〜〜〜!!!って悶えました、天才です……幸郎も解釈が一致すぎて……ギュンギュンしました、最幸のお話をありがとうございます!! (2021年4月30日 3時) (レス) id: 01c5a5310c (このIDを非表示/違反報告)
なつなつき(プロフ) - お誕生日!!!最高です!ありがとうございます!! (2021年4月17日 9時) (レス) id: 299227e86e (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 赤兎リエ輔さん» 楽しみにしてますね!ゆっくりで良いのでこれからも頑張ってください! (2020年5月8日 8時) (レス) id: 2b0a425061 (このIDを非表示/違反報告)
赤兎リエ輔(プロフ) - あおりんごさん» 1番だなんて勿体無いお言葉です…!嬉しすぎます…!コメントありがとうございます、とても自身と励みになります…。楽しんでいただける作品を提供できて幸せです、!コメント並びにご愛読いただきありがとうございました。これからも頑張ります〜! (2020年5月8日 1時) (レス) id: 9a5c590feb (このIDを非表示/違反報告)
赤兎リエ輔(プロフ) - 紫音さん» レス遅れちゃってすみません…!ずっと応援していただいてありがとうございましたぁぁ…!紫音さんのお声に本当に励まされました(*´`)絶対また作ろうと思っているので、その時はまたぜひお付き合いください、!本当にありがとうございました…!! (2020年5月8日 1時) (レス) id: 9a5c590feb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤兎リエ輔 | 作者ホームページ:http://nekomoti
作成日時:2020年3月30日 23時