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27. ページ29

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自分が他人より幾らか力に恵まれていることは知っていた。

そしてその何倍も呪われた身であると知っていたから、そうやって俺は人並みの幸せを諦めた。






「どうか、よろしくお願いします。」





見窄らしい娘。

見たところ、俺より随分と若い。男もまだ知らぬような小さな女だった。


直ぐに、“俺と同じ”なのだと思った。

人間共の身勝手な都合を押し付けられ、呪いだ何だとそれらしい理由をもって自由を奪われた。

だからと言ってどうという訳では無い、が。



どうせどこまで行ってもこの小娘も人間だ。

期待など、するだけ無駄だ。





「…………っ、」




顔を上げた女と、視線が交わる。

綺麗な、綺麗な瞳。


まるでこの世の美しいものの上澄みを寄せて集めたような透き通ったその瞳は、俺が生きてきた中で何よりも鮮やかで、うっかりと泣いてしまいそうな程に美しい。



暗く沈んだ赤色の瞳の俺とは違う。

この世界に希望しか見出さぬような、そんな瞳だった。






「下らん。」





目の前の女に向けた言葉か、はたまたこの女に他と違う期待を抱いてしまった俺に向けた言葉か。


下らない、本当に下らない。


人間が人間同士で傷つけあうこの世界も、そんな不条理をただ黙って受け入れている目の前の女も。



──それでいて俺に無いものを持っているこの女が、俺はどうにも、気に入らなくて。






女の小さな声が耳を揺らしたような気がしたが、俺は気に留めずに自室へ篭った。


闇、闇、闇。


陽の光の一つも差さないこの部屋は、呪われた俺に心底相応しい。

ここでただ命の終わりを静かに迎えることだけが、俺がこの世に落とされて成すべきことだと言うのに。





「…………下らん。」





力ない声が、闇に溶けた。




女は、俺の顔を見ても顔色一つ変えることはなかった。

それどころか、何かを続けようと少しだけ頬を緩めながら口を開きかけたのだ。




まさか、と思う。

まさか俺を見て何も思わないわけがない。


村人達は俺を畏れた。

人間としての生を受けながら、化け物のような見た目の俺を忌み嫌った。

それなのに、あの小娘は、どうして。



……。

…………、いや、やめよう。




どうせ明日になれば、あの女も逃げ出すはずだ。

何も変わらない。

明日になれば、何も。



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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺   
作品ジャンル:恋愛
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梅鉢朝桜 - 宿儺様ぁ…(泣) 愛してます、もう本当に…。素敵な作品をありがとうございます!!! (2023年4月26日 23時) (レス) @page43 id: 5a6192c453 (このIDを非表示/違反報告)
レナート(プロフ) - 好き……泣きました。。最高過ぎます…。こんな素晴らしい神作をありがとうございます…。 (2022年3月31日 2時) (レス) @page43 id: 3e48fe4f1f (このIDを非表示/違反報告)
ゆいゆい - なんか原作で泣いたことないのに二次創作で泣くのなんで?特に宿儺と夢主ちゃんが最後話していたところが感動しました!応援しています! (2021年8月10日 14時) (レス) id: de4752e106 (このIDを非表示/違反報告)
好きです大好きです - えっ、何でしょうもうなんか凄かったです(;;)色んな夢小説を拝見していましたが、こんな素晴らしい作品初めて会いました!!本当に素晴らしい作品だと思います、読んでいるうちに情景がすんなり頭に思い浮かんじゃいますよ!お2人が幸せになることを祈ってます(^^♪ (2021年7月23日 17時) (レス) id: fdb8e911e1 (このIDを非表示/違反報告)
睡眠時間 - 途中で全てに気づいた瞬間、グッと溢れ出てきた感動、それと同時に作者様の素晴らしさを目の当たりにした。まるで、全てを見透かされていたかのような、先回りされた感じ。←ポエマーしてみました 一言言うと、最高でした大好きですありがとうございました!!!! (2021年4月20日 0時) (レス) id: ee5607c705 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月9日 22時

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