北信介の葛藤 ページ45
居酒屋割愛シーン
ポケットから着信音。こんな年末に取引先からかかってくることもないだろうし、ばぁちゃんだと思った。
だが、そこにディスプレイに映っていたのは俺の後輩で、婚約者の彼氏だった。
「なんや」
『北さん、いきなりすんません。今日の夜、空いてますか?』
「....そやなぁ、空いとるで」
『話したいことがあるんで、今日夜ごはんいいすか』
前会ったときよりも、声が据わってて、こっちが気迫に負けた気分だった。
話す話題は一つ。互いの嫁さんについて。だがしかし、もう俺の答えはきまっていた。
「単刀直入に言え」
「Aを返してください。あいつは俺のです」
「.......待ちくたびれた、侑。お前はいつも肝心な時に行動力がないねん。遅いわ、2か月何しとった。それにそもそも俺のて、誰の所有物でもないやろ」
「へ、は?」
なんだかどいつもこいつも、自分の思い込みが激しくて語彙がないと思った。やっぱり何年も一緒にいると、似てくるものだろうか。なぁ、A。
20秒ほど理解に催したのか、頭を掻きむしっていた侑。しかし、理解できたとたん満面の笑み。
やっぱり、昔と変わってない。
「幸せにすることができるんは、俺やない。実際この二か月、どこか上の空な部分もあって。愛されとんなぁ、ほんまに」
「......北さんはそれでよかったんですか」
「ええもなにもない。俺は惚れた女に幸せになって欲しい、それしか考えとらんからな」
普段はあんまり飲まないようにしているお酒も、なんだかいつもより美味しく感じて。
喉につっかえていた靄が取れる感覚。
でも、もう何年になるか分からない片思い。きっと、俺は明日になって後悔で泣いとるかもしれない。
それでも、Aが屈託の無い笑顔で笑って。明日も明後日も、来週も来年も、ずっと笑っててくれるなら、俺の片思いなんて、正直どうでも良かった。
「今日は気分がええからなぁ、付き合ってもらうで」
「は、俺酒全然呑めませんて!ちょ、北さん!」
おちょぼさんに日本酒を注げば、しかめっ面の侑が水面に映る。だがしかし、その顔のどこかに満更でもない笑みが隠れていた。
きっと、これが正しい判断だと思う。というよりも、これ以外ない。
どうやら自分は想像以上に、あの子にもコイツにも甘いようで。
ばあちゃんにはどう言い訳しよう、そんなことを考えながら、日本酒をあおった。
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狼 - 三角関係ってやつですねぇ…ヤバイですねぇいいですねぇ←(さいてi (2020年3月20日 21時) (レス) id: 58dc9d80b9 (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - ありがとうございます!!自分の中でもいかに北さんが喜ぶハッピーエンドというのが難題でした!最初から読んでいただけてるなんて、本当に光栄です。よろしければ少ないですが、小話と次作も読んでいただけると嬉しいです!! (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - 紫乃さん» ありがとうございます、めちゃくちゃうれしいです。当方本当に語彙がないので、国語辞書を片手に執筆したかいがありました! (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - 瑞稀さん» コメントありがとうございます。どうしてもここまで北さんについて深く掘り下げると、肩を持ちたくなりますよね!!小話では北さんに救われるよう書くので、楽しんでいただけたらと思います。 (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
猫太郎丸 - 完結おめでとうございます!!!初投稿されたときからずっと見てた作品で毎回ムズきゅんされました…!侑くんも北さんも報われてほしくてでも作者さんの完結方法はとてもスッキリして今とても爽やかです!(?)改めまして本当におめでとうございます! (2020年3月7日 22時) (レス) id: 3db7769967 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:本郷ゆい | 作者ホームページ:http://nanos.jp/honngoyui/
作成日時:2019年11月11日 22時