交 ページ14
毎朝早起きだったから、北さんより早く起きる気満々だったが、なんと朝ごはんまで作って、私を起こしにもう一度ベッドに戻ってきたという。
「はよ起きて飯食わんと、重役やないAさんも重役出勤になるで」
「嫌味ですか。とか言いつつ、まだ6時回ったばっかですよ」
「あれや、女性はメイクしたり大変やないんか」
「そんなの20分あれば、ええ女になれますさかい、まぁでも、早起きはええですね」
炊きたての白米に梅干し。ワカメとお揚げさんの白味噌汁。副菜はおからの和え物という、北さん特製関西の朝飯を頂いた。
美味しいお揚げさんですね、と言えばなんと、地元の兵庫県から、後輩が送りつけて来たらしい。
たしか侑も兵庫県出身だったな、ってアカン。何を思い出し始めとるんや、私。
その上、車で一緒に出勤というもう、至れり尽くせりで、このままでは、ダメ人間になってしまうような気さえした。
「別にいいんやないか、社長の嫁さんなら」
「まだ北さん社長じゃないのに...?」
「何を言っとるねん、今月末の人事移動を境に、昇格やで」
「は、今月末!?私てっきり数年後かと.....。北さんが問題あるわけじゃないんですけど、まだ26とかそこら辺ですよね」
「仕事は年齢やなくて、キャリアやで。経験や、経験」
北さんってこんな饒舌だったっけ。もっとジッとしてるというか、堅物系だと思ってた。
大きなスクランブル交差点の信号で停まったところで、北さんは思い出したかの様に、鞄から封筒を取り出して、私に見せた。
引き出てきたそれは、女の子なら誰しもが憧れるアレのパンフレットだった。
ウェディングドレスやお色直しのドレス、白無垢までぶ厚い冊子。
語彙力が無いなぁ、と北さんにツッコまれるが、私は先程から中身を覗いては、可愛い可愛いしか言えていない。
でも、それでさえ北さんは微笑ましい、とでも言うような顔で私を見るもんだから。
不覚にも、ドレスなんかより北さんの方が可愛いのではないか、なんて考えてしまった。
その反面、退路を塞がれてきた気がした。お父さんが私と北さんを結婚させるなんて思い立たなければ、私の読み通り、社長交代まであと数年はあっただろう。
それにこう、ドレスやら会場やらと、もう準備が始まっとるなんて。まるで後戻りはなしや、と言われてる様で、なんだか胸が苦しかった。
どれだけ泣いたって、私の中には侑しかいないのだ。それならいっそ、侑への想いを涙に溶かして、流して。
消し去りたかった。
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狼 - 三角関係ってやつですねぇ…ヤバイですねぇいいですねぇ←(さいてi (2020年3月20日 21時) (レス) id: 58dc9d80b9 (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - ありがとうございます!!自分の中でもいかに北さんが喜ぶハッピーエンドというのが難題でした!最初から読んでいただけてるなんて、本当に光栄です。よろしければ少ないですが、小話と次作も読んでいただけると嬉しいです!! (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - 紫乃さん» ありがとうございます、めちゃくちゃうれしいです。当方本当に語彙がないので、国語辞書を片手に執筆したかいがありました! (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - 瑞稀さん» コメントありがとうございます。どうしてもここまで北さんについて深く掘り下げると、肩を持ちたくなりますよね!!小話では北さんに救われるよう書くので、楽しんでいただけたらと思います。 (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
猫太郎丸 - 完結おめでとうございます!!!初投稿されたときからずっと見てた作品で毎回ムズきゅんされました…!侑くんも北さんも報われてほしくてでも作者さんの完結方法はとてもスッキリして今とても爽やかです!(?)改めまして本当におめでとうございます! (2020年3月7日 22時) (レス) id: 3db7769967 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:本郷ゆい | 作者ホームページ:http://nanos.jp/honngoyui/
作成日時:2019年11月11日 22時