烏よ、再び【ハイキュー！！】

烏よ、今 ページ17

白衣を着た男がコツコツと指で机を叩く。



　ギュッと寄せられた眉を見れば、不機嫌なことが窺えた。



｢先生ー、患者さん入れても良いですかー？｣



？｢……お願いします｣



　酒焼けした、かさついた声。それには関西の訛りが色濃く入っている。



　男に問い掛けた看護師は怖がったのか、そうそうに姿を消した。



『おはよーございます、藤永先生』



藤永｢おはよう。若さってええなぁ｣



　爽やかに笑うAを藤永は眩しそうに見た。



　藤永は今年で三十路を迎える。



　若い頃にはあった勢いがなくなって来ているのを、この頃感じているらしい。



藤永｢じゃあ膝出して。診察するから。……あ、サポーターは外してな｣



　藤永の言う通りにAはサポーターを外し、ベッドに寝そべった。



藤永｢……これ、痛いか？ これは？｣



　藤永はAの足を色んな方向に曲げ、逐一聞いていく。



　そのうち藤永は足から手を離し、一つ頷いた。



藤永｢──おめでとう、治ったみたいやで｣



　藤永は今までにないほどの優しい笑顔を浮かべて言った。



『じゃあ……！』



藤永｢あ、でも無理は絶対にあかんで。痛くなったらすぐ止めること。今度こそ歩けんようになるで｣



　藤永は浮かれかけたAを鎮めるように言う。



　本当に、二度も同じ所を壊して跳べる方が奇跡なのだ。



『ありがとうございましたっ！』



　Aはその顔に極上の笑みを浮かべて礼を言った。



　藤永はそれを見て、照れたようにシッシッと雑に手を振った。



　Aが去った後、藤永は椅子の背もたれに寄り掛かり、深くため息をついた。



藤永｢ほんまに分かっとんのか、あの子は。２回も壊すとかちょっと有り得へんわ｣



　藤永は呆れたように吐息混じりの愚痴を零した。

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