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烏よ、陰と ページ12

及川「ねーAちゃーん。アップ手伝ってよぉー」



 及川がAに甘くねだった。



 Aは嫌なのか、顔をしかめて武田に向き直った。



武田「あ、僕なら大丈夫ですよ。いってらっしゃい」



 武田はバレーを知らない自分に気を使ったと思ったらしく、慌ててAに言った。



 そう笑顔で送り出されてしまえば、もはやAに打つ手はない。



 Aは渋々腰を上げ、背後でしてやったりと笑う及川を睨み付けた。



 二人は体育館の隅に移動して、ストレッチを始めた。



『やっぱお前、体柔らかいのな』



及川「あったり前でしょ! 岩ちゃんじゃないんだから」



 ぐいぐいと遠慮なく及川の背をAが押す。



及川「……ね、Aちゃん」



 及川がその顔に、ふっと影を落とした。



 口調もいつもより少し真剣さがある。



『何』



及川「ホントに、故障したの?」



『ん。右膝を派手にやった。まあもうすぐ完治するし、心配するような事じゃねぇよ』



及川「──前も、右膝だったよね。確か中3の時」



 及川はAを責めるように言った。



 そうだ。Aは中3の時に膝を壊し、中学総体に出場出来なかった。



 Aもその時の事はよく覚えている。



及川「膝を壊しやすいって、言ったの? 皆に」



 及川はそう言いながらプレー中の烏野を見た。



 対照的に、Aはチームメイトから顔を背ける。



及川「……その様子だと言ってないみたいだね。ちゃんと考えなよ? 中学の時の二の舞になるよ」



『分かってる』



 ストレッチが終わった及川は、よっこらっせと立ち上がった。



 及川は座ったままのAを上から見つめた。



及川「Aちゃん、俺は心配なんだよ」



 優しい口調で及川は言った。



 そしてランニングの間、及川は中学時代の事を思い返していた。

烏よ、落つる→←烏よ、刮目せよ



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よもぎ(プロフ) - 草さん» 失礼しました。作者様なんですね……! 頑張って下さい。 (2019年10月23日 7時) (レス) id: 3bd3258fc4 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - よもぎさん» いえいえ!誰にも間違いはありますので謝らなくていいですよ。そのキャラは夢目線で見てないですし自分で書きますw(木下久志です) (2019年10月23日 7時) (レス) id: 59c85b2532 (このIDを非表示/違反報告)
よもぎ(プロフ) - 草さん» うわー! ごめんなさい! 修正してきます。好きなキャラ……教えてもらえれば、番外編とかに出しましょうか? (2019年10月23日 7時) (レス) id: 3bd3258fc4 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 「烏よ、巣へ」のところなんですが山口はミドルブロッカーです…。旭さん出ないの残念だけど注意書きに書かれてるのは優しいです。私の好きなキャラのひとりは名前すら出なかったりしますw 選手として活躍する夢主って難しいですよね。 (2019年10月23日 0時) (レス) id: 59c85b2532 (このIDを非表示/違反報告)
よもぎ(プロフ) - ハルさん» ごめんなさい。旭さんの活躍を奪っている事は重々承知しています。しかしエースの主人公でないと決めているラストに出来ないんです……。それから上の「旭さんがいない」旨の注意書き、見ましたでしょうか? このようなコメントはお控え下さい。 (2019年10月22日 15時) (レス) id: 3bd3258fc4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:よもぎ餅のわらび | 作成日時:2019年8月6日 14時

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