守るべきもの ページ12
Aを妹のように思っている。
それは本当のことだった。
隣を歩いているAの横顔を見る。
Aにはいつでも、幼い頃からの面影がいくつも重なって見えていた。
散歩の途中、たんぽぽを見つけてしゃがみ込むA。
おいしい煮付けができたのだと、味見のお玉を差し出すA。
剣術を教えてくれと、真剣に頼み込んできたA。
遊郭での戦いから妙に絡んでくる宇髄の真意にも気づいていないわけではない。
だが・・・。
刀鍛冶の里から帰って来たAは、それまでよりぐっと大人びていた。
ずっと見えていた面影からかけ離れて見えるほどに。
Aとの関係も、きっと変わっていくべきなのだ。
(もう、守るべきものではないのかもしれない。)
ふと、そんな考えが頭をよぎる。
想像しかけて怖くなった。
惨劇の起きた家の玄関で座り込んでいたところを保護してから、Aはずっと慕ってくれていた。
むごい悲劇を見た任務の帰り、何度Aの存在に支えられたことか。
もう少し手元にいて欲しくて、意地悪を言った。
「いや、よく泣いていた。」
えっと声をあげて、Aは頬を染める。
『ご迷惑をおかけして・・・』
違う。
迷惑なんかではない。
「うちに来てくれてよかった。」
Aはパッと手を放し、冨岡を追い越して行く。
振り向いて笑った。
『師範がそう思ってくれたなら、とっても嬉しいです。』
「そうか。」
早く帰ろう。
そう言って歩き出す。
Aの料理は久しぶりだ。
『そうですね。』
Aは冨岡の隣に戻り、ふふっと笑った。
ギィィヤアアアアアアァ
ものすごい悲鳴が蝶屋敷中に響き渡った。
『ひゃえっ？』
定期検診に来ていたAは肩を震わせる。
『ななな、何事でしょうか。』
「善逸君が帰って来たみたいね。」
アオイが何やら怒鳴っている声が聞こえる。
「どいつもこいつもですよ・・・」
しのぶはぴきぴきと効果音が出そうな勢いで青筋を立てた。
『し、しのぶさん。怒ってばかりでは健康に良くないです・・・』
「全く。誰が怒らせていると思っているのですか？」
う、とAは言葉に詰まる。
『その節に関しては言葉もございません・・・そしてうちの同期がごめんなさい。』
そう言ってがっくり頭を下げた。
ふうっと息を吐き出すしのぶ。
怒りは去ったか。
盗み見るA。
「全くですよ。」
しのぶはつんと口を尖らせた。
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ひかる(プロフ) - ミユさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*^^*) (5月7日 7時) (
レス) @page42 id: c4c9e482b4 (このIDを非表示/違反報告)
ミユ(プロフ) - 普段小説などで泣かないのですが、大泣きしました。この作品大好きです。 (5月6日 22時) (レス) @page45 id: 14f11f958d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひかる | 作成日時：2024年3月9日 9時
