第七話 ページ8
そして当日
「西園寺様……ちょ、あの痛いです。」
「我慢しろ！貴族のダンスパーティーで庶民の貴様が私の紹介で踊るんだ。いつものなりで踊らせてたまるか！」
「いでででで……」
化粧室で私は一の髪をこれでもかと後ろに引っ張っていた
気怠げな一が少し涙を浮かべて痛がっているのはいつもと違って新鮮で何より気分がよく、本来ならそこまで引っ張らなくてもいいのだがついつい過剰に引っ張ってしまった
しかし出来は上々
鏡の前には見違えた一がいた
かっちりしたオールバックにピシッときまった燕尾服
夢の姿がちらついたがこれが一番しっくり来るのだから仕方ない
メイドにやらせてもよかったがもし私に相応しくない見てくれにしてしまえばやり直しに時間がかかってしまう
なら初めから私がやればいいのだ
幼少の頃からあれよこれよと仕込まされ、これもその一つだった
ま、ダンスで失敗するのは決定事項だしそこまで気を使わなくても良かったか？
当の一は落ち着かない様子だったので漸く緊張してきたかと自慢げに笑った
「そんなに緊張せずともいいさ。貴様が失敗した所で誰も気にも止めやしない。」
庶民共はやはり庶民は貴族にやはり逆らえないと希望を無くすだろうがな
「そうですか……？」
一は的を射ない様な声色で言った
なんだ？
首までかしげて……
「何か異論でも？」
「……いや、無いです。行きましょうか。」
「え、ちょ、おい！」
聞けば一は素面のまま私を置いて化粧室から出ていった
あいつ私の側近だよな！？
守るべき主人を置いてどうしよってんだ！
私は追いかけざる終えなかった
なんか間抜け……
いやいやいや！
私は誇り高き貴族の嫡子！
庶民のペースに呑まれるな！
私は頬を叩いて気合いを入れると会場に向かった
会場は絢爛豪華
大きく輝くシャンデリアが天井の中心で輝き音楽団が奏でる厳かなクラシックが流れる
あちこちに高く連なるケーキや一流シェフが作り上げる美味で見た目も素晴らしい料理が立ち並ぶ
着飾った貴族達は皆楽し気だ
庶民は羨ましそうにその姿を見ながら給仕に勤める
そうそう
これこそが貴族と庶民の関係性
こいつがイレギュラー過ぎるだけなのだ
だがそれも今日で終いだ
私は代表挨拶として会場の中央に立つ
男女関係なく私のことを羨望の眼差しで見つめる彼らに私は微笑んで言った
「今年もまた素晴らしいダンスパーティーになることでしょう。そろそろダンス大会の時間です。誰が一位を取るのか私も今から楽しみです。ではどうぞごゆるりとお楽しみください。」
歓声が響く
さて、一
お前の力見せてみろ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：闇鍋ソース＆ナイフ x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mesemoaLOVE/
作成日時：2019年8月18日 20時
