幻滅されて当然 沖田side ページ38
「…あんときも、その前も、俺はお前に言った。お前のことを、護るって」
溢れて溢れて、噴き出してきた罪悪感が何らかの形となって何処からか出てきてしまいそうなくらいだったけれど、何とかそんな苦しさを堪えて、俺はそう口にする。何者かに首を絞められているみたいに息苦しい。けれど俺の背後には誰も居なくて、ここに居るのは俺とAだけで、もし俺の首を絞めている奴が居るのだとしたら、それは俺自身だ。俺自身の弱さが、臆病が、俺の首を絞めているのだ。それでも、俺は声を出さないといけない。まだ、言わなきゃならないことがあるのだ。弱さや臆病を振り払って、言葉を音にしなければならない。Aは俺を見据えたまま、静かにひとつ頷いて見せた。
『……護る』
『……護るよ』
『……お前が俺を護るってんなら、俺はお前を護ってやるよ』
いつかの病室でも、俺はそんなことをほざいていた。Aを討ち入りに参加させなかったのは、俺がAが傷付くことを恐れていたからで、『覚悟が足りない』なんてことを言ったのは、俺自身がAを『護る覚悟』が足りていなかったからだということを告白して、そうしたらAは言ったのだ。自分が無事で、助かったとしても、俺が傷付くのなら、そんなものは嬉しくも何ともないんだと。
Aはそんなことより、俺の隣で、俺と共に戦い抜くことを望んでいた。護り護られ、お互いの背中を預け合うことを望んでいた。だから、あの時俺は言ったのだ。『護る』と。Aを気持ちをしっかりと受け止めたようなふりをして。
それは、きっと俺達の中の約束だった。
なのに俺は、その約束を破ったのだ。
…自分の弱さ故に。
「なのに何度も何度も、俺はお前に誓ったようなふりをして、護るなんざ無責任なことばっか言って結局はそんな度胸なんかなくて、お前との約束を破った」
堪らず目を伏せてしまった。自分の足元に何があるわけでもないのに、顔をうつむかせてしまった。やはり俺は、Aが思っているよりもずっと卑怯で、ずっと情けなくて、弱い。
こんな俺は、幻滅されて当然なのだ。
「…ごめん……、すまなかった」
奥歯を噛み締めた。手のひらを握りしめた。前を見られない。どうしたらいいか、分からなかった。Aを見つめるのが、恐ろしかった。どうしてだろう、今はどうしようもなく、怖かった。
「……」
……沖田、隊長、と。少しの間を置いてから、Aは呟く。そして、竹刀を床に置いたような音がして、次に、ゆっくりと歩くような音が聞こえた。
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樹里 - 今回も陽太くんかっわいいっ!!うちの弟もこうだったらなぁ〜 あと、全然関係ないんですけど、名探偵コナンに沖田総司っていう人が出ててめっちゃびっくりしました。ちょっとパクられたような気がしたんで、ソッコーでコレ読みました(笑) (2018年10月7日 18時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 樹里(元茉莉華)さん» 樹里さん!お久し振りです!コメントありがとうございます!いい感じのところですね〜私もここらへんは苦戦しつつも書けるときはとことん楽しんでいたので、うまいこと盛り上げられたらいいなと思います!着実に成長していく二人をお見のがしなく!(笑)頑張ります! (2018年9月26日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
樹里(元茉莉華) - ピピコさんお久しぶりです! なんかいい感じのとこですねっ!! 更新楽しみにしてます! (2018年9月25日 17時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ヒタキさん» ヒタキさん!初めまして!ありがとうございます!いっぱい読んでださってるんですね…!すごく嬉しいです!何度も読み返してもらえるようないいお話が書けていたらいいなと思います!これからもドキドキワクワクして貰えるように頑張っていきます!! (2018年9月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ヒタキ - こんばんは!初コメさせていただきました。ピピコさんのこの小説本当に大好きで何回も読ませてもらっています!!いつもドキドキワクワクです。これからも応援しています^^ (2018年9月6日 23時) (レス) id: 130f1442ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年6月15日 19時