ほめごろし ページ10
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もーなんなん、と思わず情けない声が口から漏れる。
「なんなんと言われても、事実だし」
朝原さんは軽い調子で続けた。知らないの宮くん、宮くんってすごく人気があるんだよ?と。
「いや知っとる、知っとるけど」
「知ってるんだ。それはそうか」
何が面白いのか、朝原さんはくつくつ笑う。席替え当初に比べたら、だいぶリラックスした笑い方だった。
「宮くん、バレーの実力もすごいんでしょう?」
「高校生ナンバーワンセッターらしいで、知らんけど」
「へえ、ファンがたくさんいるって聞くもんね。宮くん、愛想もいいしね」
曖昧な笑みを浮かべる。俺はそういったファンに対して大抵は邪険にしないが、だからと言って特に意識をしてサービスもしない。しかもそれは何も無ければの話で、サーブの邪魔なんてされようものなら思い切り殺気立つ。
朝原さんが愛想がいいと感じているなら、それは彼女が俺のファンでないというところが大きいのではないのだろうか。俺を意識しないのは気に入らないが、それ故に気楽というとんでもない矛盾である。
「体格もいいしね、モテるのも頷ける」
「……え、ちょ、なんなん」
さっきから朝原さんの様子がおかしい。やたらと俺をほめる。警戒して一歩下がると、きっちり一歩分だけ距離を詰められた。
「私にも優しくしてくれてありがとう。さっきだって、私が一人で図書室に行こうとしてたから気を使ってくれたんでしょう?」
朝原さんは追撃の手を緩めない。どうやら俺の考えなしの行動を親切だと勘違いしているらしいことに対する申し訳なさ、それと単純に誉めそやされる気恥ずかしさ。それらに耐えられず、俺はとうとう顔を両手で覆ってしゃがみ込んでしまった。
「もーなんやねん……!」
「ごめん、ちょっと意地悪した」
私浮かれてるのかな、と一人ごちる。いや、全然表情変わっとらんけど。そもそも何に?
ふわり、目の前に朝原さんが座り込む気配がする。俺は恐る恐る指の隙間から彼女をうかがった。
「宮くん、『宮』って呼んでもいい?」
膝の上に両腕、さらにその上に顎を乗せるようにして彼女は他愛もないことを言う。
俺は双子なので、下の名前で呼ばれることが圧倒的に多い。わざわざ許可を取る割には苗字から「くん」が取れただけなのを少し不思議に思ったが、その慎ましさは朝原さんらしいかもしれなかった。その程度許可取らんでもええのにな、と思いつつ返事を返す。
「……別にええけど」
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せなけいこ - この夢主ちゃんの性格も、少女漫画のヒロインな宮侑もめっちゃ好きです!この作品を生んでくれてありがとうございます。性癖に刺さりまくりです!! (2020年9月18日 15時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» お返事が遅れてすみません!色々考えたのですが、本編はここで終わりにします。しかし私としても書きたいネタがまだたくさんあるので、そのうち別作品と纏めて短編集を出そうかと…。なので、気長に待ってくださると嬉しいです。 (2020年3月5日 1時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - さかきさん» ただ私がこの主人公もミヤツムも好きなので続いて欲しいっていう我儘なのですが…( ; ; )もし続きを書こうか少しでも考えてらっしゃるならぜひ見たいです…! (2020年3月2日 3時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» 初めまして、まず初めにご愛読ありがとうございます。ごめんなさい、話数の問題で断念したんですが、やっぱり終わりにしては歯切れが悪いですよね…!?もう少し何とかできないか検討してみます! (2020年3月2日 0時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - はじめまして。こちらずっときゅんきゅんしながら読ませて頂いてました…!最後、終わりとなってますが完結なのでしょうか( ; ; )続きを楽しみにしてたので… (2020年3月1日 14時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さかき | 作成日時:2019年9月24日 23時