朝原さんという人 ページ7
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足りんかった、と治が本日何個目かのパンを求めて席を立つ。大食漢がゆえに「食堂の主」なんていう異名を密かにつけられていることを、本人は知っているのだろうか。
片割れの背中を目線だけで見送って、銀に視線を戻す。
銀曰く。朝原さんは高校進学と同時に兵庫に越してきたらしい。標準語圏から来たのだろう、関西弁で話さないのにようやく合点がいった。
「なるほどなー、すっきりしたわ」
「ああ、こういう自己紹介は二年ではせぇへんもんな……」
「なあ、部活とかは入っとらんの?」
「そん時は特に予定はない、言うとったかなあ」
俺と銀の会話にしびれを切らしたように、角名が顔のこと聞いたんだけどと言う。二人して顔を見合わせた。
「可愛い……か?」
「どちらかっちゅーとキレイ系やろ」
「不細工ではないけどだからって取り立て整ってもないよな」
「そもそもずーっと文字追いかけとるしな」
「でも目はデカいんやで、ほんまびっくりするくらい」
「あー、そう言われればそうだった気もするわ」
「つまり、」
俺と銀の顔に交互に視線を巡らせていた角名が、考えを整理するように一度言葉を切る。
「別に美人でも可愛くもない、ってこと?」
「まあそうなるわな、中の上ちゃう?」
「一個一個のパーツよりも全体が整っとるタイプやねん」
銀からのフォローは言いえて妙だ。全体のバランスが良くて(目がデカすぎる気はするが)、だからこそこれといった印象は残らない。
「じゃあめちゃくちゃ頭がいいとか」
「まあ悪くはなさそうやけど、普通やない?」
「運動神経抜群だとか」
「それも普通やったと思うけど」
「えぇ……人望が厚いとか?」
「せやから暇があったら本ばっか読んどるタイプなんやって」
じゃあなんで侑はその朝原さんとやらを気にかけてるの、と角名が言う。なんでと言われても。
「メリットもないのに、自分に興味ない子を追っかけてるの……あ、そっか」
意味深ににやあ、と笑った角名の口が好きなんだ?と動く。わざとらしく一音一音をはっきり区切った発音だった。
「はあ?そんなんとちゃうわ」
「もっと面白い反応しろよ」
「ちゃうもんはちゃうんやからしゃあないやろ」
銀にたしなめられて、渋々と言うように構えていたスマホを引っ込める。角名は人の隙を集めるのが趣味なんだろうか。
不意に銀島くん、と澄んだ声がした。
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せなけいこ - この夢主ちゃんの性格も、少女漫画のヒロインな宮侑もめっちゃ好きです!この作品を生んでくれてありがとうございます。性癖に刺さりまくりです!! (2020年9月18日 15時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» お返事が遅れてすみません!色々考えたのですが、本編はここで終わりにします。しかし私としても書きたいネタがまだたくさんあるので、そのうち別作品と纏めて短編集を出そうかと…。なので、気長に待ってくださると嬉しいです。 (2020年3月5日 1時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - さかきさん» ただ私がこの主人公もミヤツムも好きなので続いて欲しいっていう我儘なのですが…( ; ; )もし続きを書こうか少しでも考えてらっしゃるならぜひ見たいです…! (2020年3月2日 3時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» 初めまして、まず初めにご愛読ありがとうございます。ごめんなさい、話数の問題で断念したんですが、やっぱり終わりにしては歯切れが悪いですよね…!?もう少し何とかできないか検討してみます! (2020年3月2日 0時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - はじめまして。こちらずっときゅんきゅんしながら読ませて頂いてました…!最後、終わりとなってますが完結なのでしょうか( ; ; )続きを楽しみにしてたので… (2020年3月1日 14時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さかき | 作成日時:2019年9月24日 23時