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どうやら変わってしまったらしい ページ44


 ……状況を整理しよう。
 明日はオフで、運よく朝原さんも休日らしい。そんなわけで今日の練習後、俺はいそいそと準備をして車を走らせた。
 ところが、俺が彼女のマンションに到着したのは約束の時間よりだいぶ早かった。どう時間を潰そうか思案したところ、ふと思い立って朝原さんを職場まで迎えに行くことにしたのだ。

 俺は朝原さんビックリするやろな、と浮かれ切っていた。しかし、それを地の底にまで突き落としたのも、また彼女だったのである。
 いや、正確にはその隣のひょろりとした男か。
 久しぶりに直接見た、相変らず目の大きいその顔。浮足立って声をかけようとしていたのに、そいつの存在に気付いて咄嗟に物陰に隠れてしまった。

 落ち着け。自分にそう言い聞かせるように、細く長く息を吐く。
 高校生の俺なら、なりふり構わず二人の前に飛び出して男に噛みついていただろう。けれど、今の俺なら二人の間に漂う空気が同僚のそれであると理解できるし、第一考えなしに行動することは許されないと知っている。行動には必ず責任が付きまとう。

 いつかの電話で朝原さんが発した、「私たちもう大人だよ」という一言が耳の奥で蘇る。おとな。未だにその単語の持つ意味は分からないし、そんなものになった気もしないが、とにかく、俺は平静を取り繕わなければならない。それだけは分かった。

 二人が一言、二言交わして別の道に進む。どうやら逆方向らしいそれぞれの家の位置にひそかに安堵しつつ、再び息を吐いた。
 風が頬を叩く。それに急かされるようにして、俺は物陰から出た。

「……宮?」

 前方の俺の存在に気付いたらしい朝原さんがぴたりと足を止め、目を見張る。眼窩から零れ落ちてしまいそうなその瞳が、無性に懐かしかった。
 俺は片手を挙げて、へらりと笑ってみせる。

「せやで、あなたの宮侑やでー」
「なにそれ」

 釣られたように口角を上げた朝原さんが、小走りに俺の隣に並ぶ。久しぶりにこうしてみると、なんだか記憶にあるよりも小さく感じる。俺の身長が伸びたからだろうか。それとも、毎日大男に囲まれて生活しているせいかもしれない。

「思ってたよりはよ着いたから迎えに来たで」
「車じゃないの?ファンの人に見つかっちゃうよ」
「うん、せやから変装しとる」

 変装と言っても、眼鏡をつけて帽子をかぶったくらいだが。それ以外はごくラフな私服である。

ただいまとおかえり→←・



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せなけいこ - この夢主ちゃんの性格も、少女漫画のヒロインな宮侑もめっちゃ好きです!この作品を生んでくれてありがとうございます。性癖に刺さりまくりです!! (2020年9月18日 15時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» お返事が遅れてすみません!色々考えたのですが、本編はここで終わりにします。しかし私としても書きたいネタがまだたくさんあるので、そのうち別作品と纏めて短編集を出そうかと…。なので、気長に待ってくださると嬉しいです。 (2020年3月5日 1時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - さかきさん» ただ私がこの主人公もミヤツムも好きなので続いて欲しいっていう我儘なのですが…( ; ; )もし続きを書こうか少しでも考えてらっしゃるならぜひ見たいです…! (2020年3月2日 3時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» 初めまして、まず初めにご愛読ありがとうございます。ごめんなさい、話数の問題で断念したんですが、やっぱり終わりにしては歯切れが悪いですよね…!?もう少し何とかできないか検討してみます! (2020年3月2日 0時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - はじめまして。こちらずっときゅんきゅんしながら読ませて頂いてました…!最後、終わりとなってますが完結なのでしょうか( ; ; )続きを楽しみにしてたので… (2020年3月1日 14時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さかき | 作成日時:2019年9月24日 23時

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