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代わって代わってと木くんはやかましい。仕方なくスピーカーモードにしてスマホを渡す。いつの間にか臣くんは出て行ってしまっていて、今のロッカールームには俺と木くんの二人だから少しなら大丈夫だろう。
「こんにちは!」
「こんにちは、朝原です」
「俺木兎!朝原さんってツムツムの彼女なの?」
「はい。高校の時から」
高校!?と木くんが一際大きい声を出す。朝原さんの鼓膜が破れやしないか心配になるも、苦笑が聞こえたので恐らく大丈夫だったのだろう。
「ツムツム、めちゃくちゃ遊んでるイメージだった……!」
なんてこと言ってくれてるんや、この人は。
相変わらず歯に衣着せないというか、脳と口が直結しているというか。たまらずスマホを取り返そうとする俺の耳に飛び込んできたのは、朝原さんの笑いを含んだ一言だった。
「そう見えるでしょう?でも宮、実は私のこと大好きなんですよ」
スマホを奪い合う恰好のまま、二人して硬直する。やがて獲物を見つけた犬のようにらんらんと瞳を輝かせ始める木くんから、決死の想いで四角い箱を取り返した。
「なんでそういうこと言うん!?なんで!?」
「まずかった?」
「まずくはないけど!いじり倒されるやろ!」
「振り回されてるね……ふふ」
それを朝原さんが言うか。思えば彼女に出会ったときから、俺は常にだれかに振り回されているような気がする。
「私も宮のことだいすきだよ」
その一言になすすべなく黙り込む。関係性が変わっていないと言えば聞こえはいいが、少なくとも俺にとってはいいことばかりではない。こちとらいい年した成人男性なんだから、いい加減立場が逆転してもいいだろう。
……とは、思うのだが。いかんせん朝原さんが強すぎると、湧き上がってくる感情は最早諦念に近かった。
「……木兎さん、宮どうなってます?」
「真っ赤!」
やっぱり、と愉快そうにくつくつ笑う。その笑い声を聞いていたら、無性に朝原さんが恋しくなった。
「次のオフ、そっちに行ってもええ?」
「うん、いいよ」
実のところ、俺が会いたいと言って朝原さんが拒否したことはほとんどない。俺が荒んででいる時だって、黙って受け入れてくれる。
「あっ、私がそっちに行こうか?」
「ええよ、待っといて」
日にちや時間はあとで連絡する約束をして通話を切った直後、チームメイトが部屋になだれ込んできた。盗み聞きしていたらしい彼らに嫌というほどいじられたのはまた別の話だ。
どうやら変わってしまったらしい→←通常運転の二人と振り回される一人
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せなけいこ - この夢主ちゃんの性格も、少女漫画のヒロインな宮侑もめっちゃ好きです!この作品を生んでくれてありがとうございます。性癖に刺さりまくりです!! (2020年9月18日 15時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» お返事が遅れてすみません!色々考えたのですが、本編はここで終わりにします。しかし私としても書きたいネタがまだたくさんあるので、そのうち別作品と纏めて短編集を出そうかと…。なので、気長に待ってくださると嬉しいです。 (2020年3月5日 1時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - さかきさん» ただ私がこの主人公もミヤツムも好きなので続いて欲しいっていう我儘なのですが…( ; ; )もし続きを書こうか少しでも考えてらっしゃるならぜひ見たいです…! (2020年3月2日 3時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» 初めまして、まず初めにご愛読ありがとうございます。ごめんなさい、話数の問題で断念したんですが、やっぱり終わりにしては歯切れが悪いですよね…!?もう少し何とかできないか検討してみます! (2020年3月2日 0時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - はじめまして。こちらずっときゅんきゅんしながら読ませて頂いてました…!最後、終わりとなってますが完結なのでしょうか( ; ; )続きを楽しみにしてたので… (2020年3月1日 14時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さかき | 作成日時:2019年9月24日 23時