通常運転の二人と振り回される一人 ページ42
・
高校卒業後もじわじわと伸び続けていた身長が、ついに止まってしまった。そろそろその事実を認めなければいけないらしい。
そんな話を電話で朝原さんにしたら、くすくす笑われてしまった。
「宮、私たちもう大人だよ。むしろ今まで伸びてたことがすごいと思う」
「え〜、せやけど伸びるんやったらどこまでも伸びてほしいやん」
「駄目だよ、これ以上大きくなったら宮の顔が見えなくなっちゃう」
妙に真剣な電話越しのその声に、思わず笑ってしまった。
俺たちの関係性は相変わらず。変わったことと言えば、その距離感くらいだろうか。
距離感というのは物理的な話で、俺はチームに所属してVリーグでプレイする一方、朝原さんはごく普通の会社員として働いていた。兵庫で就職した朝原さんとは、いわゆる遠距離恋愛というやつだ。
幸い俺が所属するチームの本拠地も兵庫ではないが関西であるため、休みがあれば遊びに行ける距離だ。しかしお互い忙しくて気軽に会えず、俺たちの最近のコミュニケーションはもっぱらスマホ頼りだった。メールもいいけれどやはり声が聴けるのがいいというのが俺たちの共通の見解で、こうしてよく電話している。
「あ、そうだ。宮、この間の試合観たよ」
「おお、どうやった?」
「黒い癖っ毛の人……十五番だっけ。あの人の打ったボール、皆取りづらそうにするよね。どうして?」
「臣くん柔軟お化けやから……。手首がめっちゃ柔らかくてな、んでそれを利用してボールに回転かけるから取りにくくなるんやで」
てっきり俺に関する感想がとんでくると思っていたのに。拍子抜けしつつ答えると、朝原さんは納得したような声を漏らした。
誰が柔軟お化けだ、睨む臣くんを適当にいなす。そうだった、ここはロッカールームだった。ベンチから腰を浮かすも、今更移動するのが面倒で元の位置に戻してしまった。
「でね、十二番の人が元気いっぱい!って感じで見てて楽しかった。確か年上だよね?」
「
渦中の木くんが俺の話!?とやかましく視界に乱入してくる。瞬間、やはり移動すればよかったと後悔した。木くんはしっしと掌を振っただけでめげるようなタマではないし、次の行動が容易に想像できたからだ。
「ツムツム誰と電話してんの!?彼女!?」
「うっさいわ!……あ、ごめんな朝原さん」
「アサハラさん!?」
ほらやっぱり。あからさまに興味津々な木くんを前に、俺はがっくりとうなだれた。
497人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
せなけいこ - この夢主ちゃんの性格も、少女漫画のヒロインな宮侑もめっちゃ好きです!この作品を生んでくれてありがとうございます。性癖に刺さりまくりです!! (2020年9月18日 15時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» お返事が遅れてすみません!色々考えたのですが、本編はここで終わりにします。しかし私としても書きたいネタがまだたくさんあるので、そのうち別作品と纏めて短編集を出そうかと…。なので、気長に待ってくださると嬉しいです。 (2020年3月5日 1時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - さかきさん» ただ私がこの主人公もミヤツムも好きなので続いて欲しいっていう我儘なのですが…( ; ; )もし続きを書こうか少しでも考えてらっしゃるならぜひ見たいです…! (2020年3月2日 3時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» 初めまして、まず初めにご愛読ありがとうございます。ごめんなさい、話数の問題で断念したんですが、やっぱり終わりにしては歯切れが悪いですよね…!?もう少し何とかできないか検討してみます! (2020年3月2日 0時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - はじめまして。こちらずっときゅんきゅんしながら読ませて頂いてました…!最後、終わりとなってますが完結なのでしょうか( ; ; )続きを楽しみにしてたので… (2020年3月1日 14時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さかき | 作成日時:2019年9月24日 23時