やっぱり少女漫画 ページ41
・
それ聞くか普通、とツッコんでやりたい。けれどそれは彼女に通用しないので、俺は不機嫌に黙り込んだ。
言いたくない。とても。認めるのが癪だ。ええい、その目をやめてくれ。もしや確信犯なのか？俺がそれに弱いことを承知でやっているのか？
「……まあ……そんなところやないかな……」
「あっ、やっぱりそうなんだ」
朝原さんがパッと表情を明るくする。少し得意げだ。体が前に傾き、どんどん顔が近づいてくる。
「ちょっ、朝原さんストップ！」
「……あ、ごめん」
鼻がくっつきそうな近さで朝原さんが止まる。いきなりはダメなんだっけ、とその距離のまま言われて、余計に心臓に悪い。
この距離で見ると、朝原さんの目の大きさが余計に強調される。瞳まで大きい。きれいだ。
「宮、するね」
何かを言う隙もなかった。朝原さんが一層近づいて、唇に触れて、戻っていく。
「……こういう時は普通、目ぇ瞑るもんやないの？」
「知らなかった。次からそうするね」
せめてもの照れ隠しにそんなことを言ってみるが、朝原さんは平然としている。それどころか、宮だって瞑ってなかったと言い返された。
「いっぱいいっぱいやったの！てか、宣言しようとなんだろうといきなりはいきなりやから！」
「いや、宮を可愛いと思ったらしたくなっちゃって……なんか、パブロフの犬みたいだね？」
ここでようやく、朝原さんが少し恥ずかしそうに身じろぎした。俺はパブロフの犬がなんなのか知らないし、朝原さんのツボがよく分からない。けれど、その様子が新鮮で可愛らしかった。
……いや、絆されてはならない。俺は朝原さんに答えてもらわなければならないことがあるのだ。腹のあたりに力を込めて、俺は再度問うた。
「治くんは最初、宮くんって呼んでたんだけどね。それだと紛らわしいからって言われて」
なるほど、正論だから反発できない。
「放課後の予定は、案内してもらってるときにいつもこうなのか聞かれたから答えただけ」
「……ごめんな、しょうもないことで嫉妬して」
「ううん、変かもしれないけど嬉しいよ……えっと、侑」
照れ臭そうに名前を呼ばれて、一瞬時が止まったかと思った。
「……A？」
「……これ恥ずかしいね」
「せやな……」
二人して赤面して、なんだか滑稽だ。俺たちは赤い頬のまま、顔を見合わせて笑った。
「暫くは名字でいいかな」
「俺もそう思うわ」
これもまた俺たちらしい。それでいいと思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 497人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
せなけいこ - この夢主ちゃんの性格も、少女漫画のヒロインな宮侑もめっちゃ好きです！この作品を生んでくれてありがとうございます。性癖に刺さりまくりです！！ (2020年9月18日 15時) (
レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» お返事が遅れてすみません！色々考えたのですが、本編はここで終わりにします。しかし私としても書きたいネタがまだたくさんあるので、そのうち別作品と纏めて短編集を出そうかと…。なので、気長に待ってくださると嬉しいです。 (2020年3月5日 1時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - さかきさん» ただ私がこの主人公もミヤツムも好きなので続いて欲しいっていう我儘なのですが…（ ; ; ）もし続きを書こうか少しでも考えてらっしゃるならぜひ見たいです…！ (2020年3月2日 3時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» 初めまして、まず初めにご愛読ありがとうございます。ごめんなさい、話数の問題で断念したんですが、やっぱり終わりにしては歯切れが悪いですよね…！？もう少し何とかできないか検討してみます！ (2020年3月2日 0時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - はじめまして。こちらずっときゅんきゅんしながら読ませて頂いてました…！最後、終わりとなってますが完結なのでしょうか（ ; ; ）続きを楽しみにしてたので… (2020年3月1日 14時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さかき | 作成日時：2019年9月24日 23時
