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朝原さんとその疑惑 ページ37


 そろそろ戻ろうかと朝原さんがベンチから腰をあげ、俺の手を引っ張る。俺もそろそろと立ち上がった。
 他愛もない話をしながら教室へ向かう。ちょうど教室の扉を開けたところで、角名たちと遭遇した。

「うわ、最近浮かれてる侑だ」

 角名はやけに突っかかってくる。そんな俺を撮って弱みゲットとか抜かして喜んでたのはどこのどいつだ。

「どこ行っとったん?」
「校舎裏。ほら、ベンチがあるところ。お昼食べてたんだ」
「暑かったろ」
「うん。でも、校舎の陰だし緑もあるし、結構居心地がいいよ」

 治と朝原さん、銀は三人でなにやら和んでいる。治が小柄な朝原さんに合わせて若干屈んでいて、気が利くのがムカつく。俺も次からそうしよう。

「あ、そろそろ時間やばいで」

 ふと時計を見た銀が言う。じゃあ、と角名と治が廊下を歩き始めた瞬間だった。朝原さんがくい、と俺の袖を引っ張る。

「どしたん?」

 早速学んだとおり、目線を低くしてみる。いつもよりも顔がよく見える。彼女はその小さい口でもって、けれども普通の音量でこう言った。

「さっきの。宮、初めてだったらごめんね?」

 ……毎度毎度、朝原さんはビックリするようなことを言う。
 ぐりん、と角名と治が振り向く。もう自分たちの教室に入りかけていたというのに、高速で戻ってきた。銀は硬直したようだ。
 朝原さんがすたすたと教室に戻っていく。引き止めたくても引き止められなかった。

「なに、何されたの?」

 ニヤニヤと変な笑い方をしている。けれども、キレている余裕はないわけで。

「……いや、きす……」

 スンッ、と二人が一瞬で無表情になる。

「キス?」
「……へえ」

 どうせ奴らはキスごとき、と思っているのだろう。この野郎。
 二人が顔を見合わせる。瞬間、ゲラゲラと笑い始めた。

「あかん、息できん……!」
「侑、初めてでもないくせに……っ!しかも朝原さんの方からやらせて……!」
「やらせたんやない!された!不可抗力ですぅ!」
「で、感想は?」
「……そりゃ、」

 俺が言い淀むと、二人は一層激しく笑い始めた。あつむかおあかい、うける、という指摘も息も絶え絶えだ。
 ようやく石化が解けたらしい銀が二人を宥める。治と角名の笑いは尾を引きつつ、だんだん小さくなって言った。
 それを聞きつつ、俺の中では一つの疑惑が生まれていた。全く躊躇する様子が無かったが、もしかして「初めてじゃない」は朝原さんの方もじゃないのだろうか。

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せなけいこ - この夢主ちゃんの性格も、少女漫画のヒロインな宮侑もめっちゃ好きです!この作品を生んでくれてありがとうございます。性癖に刺さりまくりです!! (2020年9月18日 15時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» お返事が遅れてすみません!色々考えたのですが、本編はここで終わりにします。しかし私としても書きたいネタがまだたくさんあるので、そのうち別作品と纏めて短編集を出そうかと…。なので、気長に待ってくださると嬉しいです。 (2020年3月5日 1時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - さかきさん» ただ私がこの主人公もミヤツムも好きなので続いて欲しいっていう我儘なのですが…( ; ; )もし続きを書こうか少しでも考えてらっしゃるならぜひ見たいです…! (2020年3月2日 3時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» 初めまして、まず初めにご愛読ありがとうございます。ごめんなさい、話数の問題で断念したんですが、やっぱり終わりにしては歯切れが悪いですよね…!?もう少し何とかできないか検討してみます! (2020年3月2日 0時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - はじめまして。こちらずっときゅんきゅんしながら読ませて頂いてました…!最後、終わりとなってますが完結なのでしょうか( ; ; )続きを楽しみにしてたので… (2020年3月1日 14時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さかき | 作成日時:2019年9月24日 23時

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