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治くんと朝原さん ページ35


 俺たち双子の昼食は主に母が作る弁当だ。しかし、今日は例外だった。
 昼休み、俺は早足で食堂に向かう。今日は母が弁当を作れないので、食堂で昼食を食べるように言われている。
 四時限目が体育で着替えをしなければならなかったので、俺は出遅れたらしかった。食堂のカウンターにはもう長い列ができている。
 背中とくっつきそうな腹を抱えつつ、じりじりと進んでいく列に並ぶ。ふと、耳が聞き慣れた声を拾った。

「あれ、宮。今日は食堂なんだ」

 言わずもがな、朝原さんの声である。しかし、近くにその姿はない。辺りを見回してみると、席につく後ろ姿が見えた。その向かいに座っている銀髪を見て、俺は叫びそうになった。
 朝原さん、それ俺ちゃう、治や……!

「おかんが今日は作れへん言うて」

「へえ、そうなんだ」

 そう言えば、朝原さんは俺に兄弟がいることは知っていても、治の存在は知らないようだった。ということは、双子だということも知らない可能性が高い。俺たちは顔も髪型も似ているので、朝原さんからすれば治を俺と思う方が自然だ。
 訂正しに行こうか迷ったが、治が特に気にしていないようなので放っておくことにした。俺も空腹なので、今から列を抜けてまた並び直すのはキツい。
 おかしな取り合わせの二人をちらちらと気にしつつ、注文した品が来るのを待つ。朝原さんと治は、時折呑気に世間話を挟みつつ料理に舌鼓を打っていた。

「宮、今日はすごく食べるんだね」

「こんなもんやろ。ついでに言えば俺はいつも銀髪やったで」

 朝原さんがフリーズする。きっと困惑しているのだろう。
 盆を掴み取り、治に近寄る。そして、頭をはたいた。

「……何すんねん」

「あんまいじめんなや、アホサム」

 朝原さんがさあっと青ざめていく。俺と治を交互に見ながら、はくはくと口を動かしていた。

「こいつが治やで、朝原さん」

 事態を理解したのか、朝原さんが悲痛な声で謝罪を絞り出した。治はからからと笑っている。反応からするに、知った上でからかっていたのだろう。

「こんなにそっくりだと思わなくて……。違和感はあったんだけど」

 繰り返し頭を下げる朝原さんを傍目に、治が行儀悪く箸で皿を指す。

「それ」

「え?」

「その唐揚げで許したる」

 はあ、となんとも言えない顔で朝原さんは唐揚げを治の皿に移す。呆れつつ、俺も隣の席に腰を下ろした。

 一週間後、この二人がやたら仲良くなっていることを俺はまだ知らない。

朝原さんとゆかいな仲間たち→←あとがき



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せなけいこ - この夢主ちゃんの性格も、少女漫画のヒロインな宮侑もめっちゃ好きです!この作品を生んでくれてありがとうございます。性癖に刺さりまくりです!! (2020年9月18日 15時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» お返事が遅れてすみません!色々考えたのですが、本編はここで終わりにします。しかし私としても書きたいネタがまだたくさんあるので、そのうち別作品と纏めて短編集を出そうかと…。なので、気長に待ってくださると嬉しいです。 (2020年3月5日 1時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - さかきさん» ただ私がこの主人公もミヤツムも好きなので続いて欲しいっていう我儘なのですが…( ; ; )もし続きを書こうか少しでも考えてらっしゃるならぜひ見たいです…! (2020年3月2日 3時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» 初めまして、まず初めにご愛読ありがとうございます。ごめんなさい、話数の問題で断念したんですが、やっぱり終わりにしては歯切れが悪いですよね…!?もう少し何とかできないか検討してみます! (2020年3月2日 0時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - はじめまして。こちらずっときゅんきゅんしながら読ませて頂いてました…!最後、終わりとなってますが完結なのでしょうか( ; ; )続きを楽しみにしてたので… (2020年3月1日 14時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さかき | 作成日時:2019年9月24日 23時

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