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彼はなんだかとっても気障だった。よく私を褒めたし、加えて距離が近い。そのくせ、驚きつつも褒めてくれたのだからと褒め返すと、なぜかすぐに顔を赤くしてしまう。照れているのだろうか。あんなに女の子たちから黄色い声をかけられているというのに?慣れてるはずなのになあ、と私の疑問は深まるばかりだった。
なんだかんだで宮くんと過ごすのは楽しかった。私と違って、彼は感情の発露が素直だ。一見正反対かもしれないけれど、なんだか気が合った。
それだけで十分だったはずだったのに、少しすれば分かりやすい関係性が欲しくなってしまって、宮くんに友達になってくださいと申し込んだ。少し謙遜しつつも快諾してくれて、宮と呼ぶことも許してくれた。距離が一気に近づいたようで、本当にうれしかったことを覚えている。
浮かれてそのことを友人に報告すると、あれをあの宮侑にもやったのかと衝撃を受けた顔をしていた。それを見て私は気付いたのだ、本来謙遜すべきなのは私の方なのだと。宮侑は、いうなれば雲の上の人なのだから。
自分が自覚していたよりも欲張りだったことにぼんやりと驚きつつ、もう友達宣言を取り消すつもりはなかった。開き直りだ。
そこからの二カ月と半月程は、本当に楽しかった。私の愛読書を共有して大盛り上がりしたり、北さんと一緒に宮に悪戯を仕掛けてみたり。本来は本を愛でてばかりだったであろう私の生活は、随分密度が濃かったのである。そしてそれは、間違いなく宮がもたらしたのだ。宮侑が隣にいてくれたからこそ、在りえたもの。
そうして冗談が言い合えるほどに親密になったある日、彼は言ったのだ。「俺のこと好きなん?」と。少しどきりとしたが、私はそれを隠せていただろうか。正直、心臓がうるさくてよく覚えていない。とんでもないことを口走っていなければいいのだが。
その胸の痛みは未体験だったが、読書を通して知ってはいた。いやいや、そんなまさか。否定しても、自覚してしまった感情は止まらない。私は大人しく白旗をふった。
隠そうと思った。私が宮が好きだなんて、友達以上になることを望むなんて、おこがましい。それだけがはっきりとしていた。幸い、私の表情筋は硬い。宮は気付くそぶりが全くなかった。
宮の鈍感さに安堵したのももつかの間、別の問題が浮上した。私は感情を隠せても、消すことはできなかったのだ。
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せなけいこ - この夢主ちゃんの性格も、少女漫画のヒロインな宮侑もめっちゃ好きです!この作品を生んでくれてありがとうございます。性癖に刺さりまくりです!! (2020年9月18日 15時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» お返事が遅れてすみません!色々考えたのですが、本編はここで終わりにします。しかし私としても書きたいネタがまだたくさんあるので、そのうち別作品と纏めて短編集を出そうかと…。なので、気長に待ってくださると嬉しいです。 (2020年3月5日 1時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - さかきさん» ただ私がこの主人公もミヤツムも好きなので続いて欲しいっていう我儘なのですが…( ; ; )もし続きを書こうか少しでも考えてらっしゃるならぜひ見たいです…! (2020年3月2日 3時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» 初めまして、まず初めにご愛読ありがとうございます。ごめんなさい、話数の問題で断念したんですが、やっぱり終わりにしては歯切れが悪いですよね…!?もう少し何とかできないか検討してみます! (2020年3月2日 0時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - はじめまして。こちらずっときゅんきゅんしながら読ませて頂いてました…!最後、終わりとなってますが完結なのでしょうか( ; ; )続きを楽しみにしてたので… (2020年3月1日 14時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さかき | 作成日時:2019年9月24日 23時