真綿の策略【宮侑】

朝原さんの独白 ページ31

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　おかしなひと、というのが彼に対する印象だった。

　兵庫生活も二年目に入り、やっと馴染んできたと思っていたクラスが変わってしまった。人見知りと言えばいいのか、友達を作るのが苦手だというのに、また一からやり直しだというわけだ。でも、去年よりはずっといい。今年は別のクラスに仲良くなった友達が数人いるが、県外から引っ越してきたばかりの去年は当然、友達どころか顔見知りさえいなかったのだ。

　そうして自分を励ましていた時、けだるげな顔で隣の席に着いたのが彼、宮侑だった。
　名字からして、よく友達が話題にしている「宮兄弟」の片割れなのだろう。実際にお目にかかるのは初めてだが、なるほどもてはやされるのも納得の整ったお顔だ。

　よろしゅう、なんて挨拶されて、緊張したのでそっけない態度をとってしまった気がする。ああ、しまった。これだから私は！自己嫌悪の中、気を悪くさせてしまったのなら謝ろうと、こっそり彼の顔色を窺った。
　しかし当の宮くんは少し眉間にしわを寄せたぐらいで、何も言わなかった。私に興味がないのだろう。そんな当たり前なことに気が付いた。そうか。私は私で、必要最低限しか関わらないだろう。こうして、私たちはクラスメイトとして適度な距離の隣人生活を送るはず、だった。

「せっかく隣の席になったんやで？仲ようしようや」

　そんな殊勝なせりふを彼が吐いたのは、なんと隣の席になってから一週間以上が経過してからのことだった。明らかにタイミングがおかしい。最初は私に話しかけていることにすら気づけなかったし、何か裏があるんじゃないかと疑いもした。彼の爽やかな笑みすら胡散臭く見えて、混乱するばかりだった。

　そんな私に気付いているのかいないのか、彼はマイペースに会話を続ける。そしてこの日から、宮くんはやたらと絡んでくるようになった。
　絡む、と言っても悪い意味ではない。むしろ、宮くんは見た目のような怖い人ではなくて、優しい人だった。
　でも、少し変わっているのも事実で。遅すぎる社交辞令を言われた時点でそんな気はしていたが、よく話すようになってそれは確信に変わった。

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