爆弾と土下座 ページ29
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朝原さんは暫くして大丈夫だと言った。大丈夫なもんか。
「怖かったやろ、ほんまにごめんな。俺、なんも考えずに行動してもうて……」
やけに大人しく付いてくると思っていたが、今考えれば抗う余裕もないくらいに怯えさせてしまっていたのだ。俺は大股で歩いていたから、どちらかというと小柄な朝原さんは付いてくるだけでも精一杯だっただろう。これ以上怒らせてはいけないと、必死に小走りになってついてきたのだろうか。そう考えると申し訳なくて、土下座でもしたくなった。いや、土下座じゃ足りない。
「怖いというかビックリしちゃった。女バレの友達に侑はいつかキレるから注意しとけ、とは言われてたんだけど、やっぱり目の当たりにすると……」
そういえば以前、朝原さんは女バレの友達に俺が人格ポンコツだと教えられたと言っていた。さては同一人物か。
「話には聞いてたけど、宮って怖いんだね……。睨まれて、ちょっと泣きそうになった」
無理をして冗談のように言って、笑ったつもりの口角が引きつっているのが痛々しい。色々と言いたいことはあるが、俺はとりあえず謝罪に専念することにした。
「ほんまにすまん……」
「謝らないで。私も悪いの、誰だってあんな無視紛いなことをされたらいやだよ。私でも怒ってた。こちらこそごめんなさい」
しかし、明らかに悪いのは俺だ。重ねて謝ろうとすると、朝原さんに止められた。困ったような顔からは少なくとも怯えは消えていて、俺はほっとしてしまった。こんな顔を見るのも久しぶりだ。
「……朝原さん俺な、めっちゃもやもやしてん。女子とそんなに関わり持つことなかったし、朝原さん以外ならこんな気持ちにならへんと思うんやけど、朝原さんに避けられるんは嫌やったんや」
正直な気持ちを吐露する。だからって彼女を怯えさせていいことにはならないし、あまりに漠然としていて、釈明にもなりやしない。けれど、こうとしか言いようがなかった。
それを聞いた朝原さんはぽかんと目を丸くする。その後、なぜか微笑んだ。この表情には見覚えがある。確か、席替えの直前だ。
「宮、すっごく恥ずかしいこと言っていい?」
「ええよ」
「間違ってたらごめん。多分、宮ね、私のこと好きなんだと思う」
言葉の意味を瞬時に理解することができず、硬直する。じわじわと顔に熱が集まっていることを自覚した瞬間、俺はここが立ち入り禁止の空き教室であることを忘れて、声の限り叫んでいた。
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せなけいこ - この夢主ちゃんの性格も、少女漫画のヒロインな宮侑もめっちゃ好きです!この作品を生んでくれてありがとうございます。性癖に刺さりまくりです!! (2020年9月18日 15時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» お返事が遅れてすみません!色々考えたのですが、本編はここで終わりにします。しかし私としても書きたいネタがまだたくさんあるので、そのうち別作品と纏めて短編集を出そうかと…。なので、気長に待ってくださると嬉しいです。 (2020年3月5日 1時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - さかきさん» ただ私がこの主人公もミヤツムも好きなので続いて欲しいっていう我儘なのですが…( ; ; )もし続きを書こうか少しでも考えてらっしゃるならぜひ見たいです…! (2020年3月2日 3時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» 初めまして、まず初めにご愛読ありがとうございます。ごめんなさい、話数の問題で断念したんですが、やっぱり終わりにしては歯切れが悪いですよね…!?もう少し何とかできないか検討してみます! (2020年3月2日 0時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - はじめまして。こちらずっときゅんきゅんしながら読ませて頂いてました…!最後、終わりとなってますが完結なのでしょうか( ; ; )続きを楽しみにしてたので… (2020年3月1日 14時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さかき | 作成日時:2019年9月24日 23時