兄弟喧嘩が名物です ページ14
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「せんせー、おるー?」
ガラリと音を立てて、保健室の扉を開ける。ここの主は割とフレンドリーな若い先生で、俺はよくお世話になっているのですっかり慣れた態度だ。
「……侑?」
うげっ、と反射で出そうになった声を慌てて飲み込んだ。見慣れた色素の薄い、こちらを見透かすような瞳。なんでここに。
「北さん……」
「なんや、また治と喧嘩したんか。原因は?」
「あー、えっと。はは……」
「言えんちゅうことはまた下らん理由なんやろ」
その通りである。部活前で北さんがいないタイミングだったので油断していた、まさかこんな場所でエンカウントするとは。
「先生は今おらんよ、あと目上の人にはちゃんと敬語使え」
「すんません」
炸裂する正論パンチに俺は謝罪することしかできない。俺は生意気な後輩だが、この人に逆らうことは恐らく地球がひっくり返ってもできないだろう。
生傷ができたんで絆創膏貰いたかったんですけどね、はは、なんて言えそうな雰囲気ではない。先生おらんのやったらまた出直しますとでも言って撤退しようか。冷や汗をだらだらと流して、俺は頭をフル回転させる。
膠着状態を破ったのは、奥からひょこりと顔を覗かせた第三者だった。
「北さん、どうしたんですか?……あれ、宮?」
出てきたのは最早見慣れた隣席の住人。あちらにとっても意外だったのだろう、瞳が丸くなっている。だが、こちらが受けた衝撃はそれ以上である。衝撃の余り、あらぬ言葉が口から滑り落ちた。
「お二人さん、ご関係は?」
二人の瞳は丸を通り越して点である。しまった。何しろ、あの北さんが放課後の保健室で女子と二人きりだったのである。気が付いたら口が滑っていた。
「あ、ご兄妹とかですか!?」
前に銀と角名が親戚なんとちゃうかと言っていたのを思い出して、勢いのまま吐き出してみる。余計にその場の温度が下がった気がした。
「……あんなぁ、」
今回に限っては至って真面目だったのだが、おふざけが過ぎたらしい。呆れたように、北さんの眼光が鋭くなる。俺は身を縮こませて衝撃に耐える準備をした。しかし、
「……バレちゃいましたね、北さん」
「せやな。しゃあないわ」
ぽかんとして二人を見つめる。予想していた正論パンチは炸裂せず、無表情と無表情が何事か納得した様子でうんうんと頷きあっていた。
「……侑」
「は、はい」
実はな、と北さんが重々しく告げる。
「俺と朝原さん、生き別れの兄妹やねん」
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せなけいこ - この夢主ちゃんの性格も、少女漫画のヒロインな宮侑もめっちゃ好きです!この作品を生んでくれてありがとうございます。性癖に刺さりまくりです!! (2020年9月18日 15時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» お返事が遅れてすみません!色々考えたのですが、本編はここで終わりにします。しかし私としても書きたいネタがまだたくさんあるので、そのうち別作品と纏めて短編集を出そうかと…。なので、気長に待ってくださると嬉しいです。 (2020年3月5日 1時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - さかきさん» ただ私がこの主人公もミヤツムも好きなので続いて欲しいっていう我儘なのですが…( ; ; )もし続きを書こうか少しでも考えてらっしゃるならぜひ見たいです…! (2020年3月2日 3時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» 初めまして、まず初めにご愛読ありがとうございます。ごめんなさい、話数の問題で断念したんですが、やっぱり終わりにしては歯切れが悪いですよね…!?もう少し何とかできないか検討してみます! (2020年3月2日 0時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - はじめまして。こちらずっときゅんきゅんしながら読ませて頂いてました…!最後、終わりとなってますが完結なのでしょうか( ; ; )続きを楽しみにしてたので… (2020年3月1日 14時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さかき | 作成日時:2019年9月24日 23時