27.投影 ページ32
目が覚めると、もう見なれた白い天井。いうまでもなく、自室である。
自室、というと、本当にここに住んでいるかのようになってしまうので、例の空き部屋とでも呼称しておこうか。
たしか私は、夜中の戦闘による睡眠不足のせいで、敵との戦いの末倒れたんだっけ、と振り返る。
最近は意識を失うことが多い。ここに来てから強くなっているはずなのにとなんとも言えない気持ちになるが、今回のは不可抗力だ。あくまで。だから仕方がない。
状況を確認しようと体を起こす。布団をあげるため引っ張るが、謎の重みによって阻害される。
その重みの正体は…神威さんだった。
正確に言えば、椅子に座り、布団に突っ伏し寝ている神威さんである。
…なぜ?別に死ぬような倒れ方ではなかっただろう。そこまで心配される程のことでもないと思うのだが。
ふと彼の横顔を見る。こうしてみるとほんとに神楽ちゃんと似ている。この寝顔からは、星を一個滅ぼそうとするような雰囲気は感じられなかった。
「……母さん」
寝言なのだろうが、そういう神威さんはどこか悲しそうな表情で。
そういえば、神楽ちゃんからは、彼女のお父さん…『星海坊主』の話しか聞いたことがなかった。
神威さんのことを話していなかったように、ただ話す必要がなかったから話していなかっただけ、ということも考えたが、今の神威さんの表情を見るに、ただそれだけが理由ではないような気がする…。
無意識に、彼の髪にそっと触れる。そのあどけない表情は、まるで幼い少年のようで、普段の神威さんからは考えられない。
「ん…」
神威さんがもぞもぞと動き出したため、とっさに手を引っ込めた。
バレたら塵にされそうだ。
「…あ、A。起きたんだ。」
眠たそうに目を擦りながら喋り出す。
「えぇ、お陰様で。神威さんがここまで運んでくださったのですか?」
「…まあね。俺のせいでもあるし。」
寝起きだからだろうか。いつもよりもまるくなっている気がする。
「あ、そうだ。もうここでの戦闘は終わったし、今は地球に向かってるところだよ。」
…え?私が寝ている間に何があったというのだ。確かに大きい星とは言えない場所だが、そんな簡単に滅ぼせてしまうのだろうか。さすが夜兎族、とでも言うべきか。
なんにせよ、帰還の兆しが見えてきたのは嬉しいことである。
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愛梨沙(プロフ) - 面白いです。更新楽しみにしてます。頑張ってください (2019年12月23日 1時) (レス) id: cd2953f50f (このIDを非表示/違反報告)
飽(プロフ) - あやさん» ありがとうございます!Twitterにもこちらにも感想を下さるなんて…!!更新頑張ります! (2019年8月16日 20時) (レス) id: a32114e1fa (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - Twitterでのとあるふぉです!飽さんの小説最高でした、、神威かっこいい、、!!応援してます!これからも頑張ってください! (2019年8月16日 18時) (レス) id: 7701c78eca (このIDを非表示/違反報告)
飽(プロフ) - ツナを食す夢猫さん» ありがとう…!!しっかりなんて…(∩_∩) 本当に適当に読んでくれて構わないからね! (2019年8月16日 16時) (レス) id: a32114e1fa (このIDを非表示/違反報告)
ツナを食す夢猫(プロフ) - 飽さんこんにちは()飽ちゃんの文をしっかり読むことは少ないから小説を読めるのが凄く嬉しいです!更新頑張ってね!! (2019年8月16日 9時) (レス) id: fb2e15c792 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飽 | 作成日時:2019年8月11日 18時