17.思い ページ22
Okita.side
「おぉ、総悟。今日もあの崖に行ってたのか?」
夜。屯所に戻るなり近藤さんに話しかけられる。
「…まぁ、そんなところでさァ。」
そう、俺はあの日以来、毎日あの崖に通い続けている。
理由はもちろん、Aさんを探すためだ。
あのときは陰になっていて気づかなかったが、降りてみるとそこにはかなり深く水が流れていた。
もしかしたら、流されてどこかにたどり着いているかもしれない、と。いや、きっと彼女なら海にでたって生きているだろう。彼女のことなら、近くで戦っている俺が知っている。
でも、なぜ、一番近くで戦っていた土方さんは、彼女を助けなかったのだろうか。土方さんとはあれ以来、口を聞いていない。そんなことをしても何かが変わる訳では無いし、それがガキ臭いってのも分かってる。でも、彼女が落ちたことを認めていない自分がいて、それを土方さんのせいにしているだけなのだ。
それに、俺だって助けられたはずなのに。
自責の念と、やり場のない怒り。
「…終もトシも、ココ最近はずっと屯所にいないな。」
そういう近藤さんだって、最近はあまり姐さんのところには行っていない。隊士たちの前では気丈に振舞ってはいるが、きっと近藤さんだって悔しいだろう。
「総悟。あいつはきっと、生きてるさ。」
拳を握りしめ俯く俺に、真っ直ぐに一言。
その近藤さんの言葉が、今の俺にはすごく救いになるのだ。
「あの…。」
突然聞こえた声に顔を上げる。するとそこには、どこか心苦しそうな顔をした隊士がいた。
「少しお話が…。」
思わず、俺も近藤さんも黙る。
相当なKYでない限り、このタイミングで話しかけて来るということは、重要な話なのだろう。
…自分の中で、一番最悪なことを想定する。
「__俺、見たんすよ。Aさんが誰かに連れさられてくとこ…。」
その言葉に、毒気を抜かれる。つまり、Aさんは生きている…?
喜びと共に沸きあがる複雑な気持ち。連れ去られた、だと?
しかし、俺の中に一つの疑問が湧く。
「なんでそれ、今まで言わなかったんでィ」
怒りに任せ、その隊士の胸ぐらを掴み、壁に叩きつけた。
ドン、という音と、隊士の苦しそうな顔でハッとなり、離す。顔向け出来ないなんていったが、本当に全く、感情の制御が出来ていないじゃないか。
「俺も、早く言わなきゃって思って…。
でも、それが…連れ去ったやつが…万事屋のチャイナ娘だったんすよ。」
「…は?」
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愛梨沙(プロフ) - 面白いです。更新楽しみにしてます。頑張ってください (2019年12月23日 1時) (レス) id: cd2953f50f (このIDを非表示/違反報告)
飽(プロフ) - あやさん» ありがとうございます!Twitterにもこちらにも感想を下さるなんて…!!更新頑張ります! (2019年8月16日 20時) (レス) id: a32114e1fa (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - Twitterでのとあるふぉです!飽さんの小説最高でした、、神威かっこいい、、!!応援してます!これからも頑張ってください! (2019年8月16日 18時) (レス) id: 7701c78eca (このIDを非表示/違反報告)
飽(プロフ) - ツナを食す夢猫さん» ありがとう…!!しっかりなんて…(∩_∩) 本当に適当に読んでくれて構わないからね! (2019年8月16日 16時) (レス) id: a32114e1fa (このIDを非表示/違反報告)
ツナを食す夢猫(プロフ) - 飽さんこんにちは()飽ちゃんの文をしっかり読むことは少ないから小説を読めるのが凄く嬉しいです!更新頑張ってね!! (2019年8月16日 9時) (レス) id: fb2e15c792 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飽 | 作成日時:2019年8月11日 18時