これが恋ではないのなら、【国見英】

《３３》 ページ40

俺の事ばかり言っているけど、水瀬(お前)はそれでいいのか？って言ったら、もういいんだと言われた。

スッキリした声で「さっき改めてフられたから」って水瀬は言った。

フられるとか、失恋だとか、嫉妬だとか。俺にだって十分有り得る未来の話。仮に好きだと言えたとして、その先は？



「……いや、今はいいか」

『なんて？』

「なんでもない。電話、ありがとう」

『おー、こっちも急に悪かった』



今は行く末とか、そういうのは後回し。それでいい気がした。だって今更躊躇して、また後悔を繰り返すなんてもう嫌だから。



「……なあ、水瀬」

『ん？』

「今度都合あったらどっかで会おう、いろいろ話そうよ」

『……！おう！』



泣きそうな、嬉しそうな、そんな水瀬の声に、言ってよかったと思った。上手くいくか知らないけど、また前みたいに遠慮なく話せたらいいのに。

これも月島に言われた “ 過去の精算 ” に入るんじゃないかって思って。少しずつでも良いから、どうにかしていきたい。



「……とりあえず、様子見か」



水瀬との電話を切って、頭の中を整理する。まず考慮しなければいけないのは、あの先輩。何の目的でAを付けていたのか。まあ確実に良い展開は望めまい。

まず本人かを確認しなければ、それで他には……前に録音したあの音声、最終手段として考えとこう。スマホも防衛策として常備しておこう。

あの先輩とAの邂逅は防ぎたい。流石に今日の明日で行動に移すことは無いと思うけど、警戒して……



「……ない、よな？」



今日起きた出来事、それが明日いきなり反映されるか？あの先輩からすれば俺にフられて、跡を付けたAに関しては水瀬に撃退されて……明らかな情報不足。

余程頭ゆるっゆるでもなければ、流石に翌日決行……なんてしないよな。






……なんて、それは見事なフラグだったんだけど。

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