《29》 ページ36
電話が鳴り続ける、早く出ろと言わんばかりにその音を主張する。でも応答ボタンを押すだけの行為が、どうしてか酷く憚られた。
だって、なんで今更?なんでこのタイミング?なんで……なんで今、
「……あ、」
震える指が、画面を掠めた。これは天からの「早く出ろ」という啓示なんだろうか。無慈悲にもスマホの画面は【通話中】に切り替わる。
『もしもし、久しぶり……水瀬だけど』
久しぶりに聞く声が、スピーカーからこちらに届く。中2の頃より幾分か低くなった、しかし何処か特徴を残す、間違いなく水瀬の声。
「……」
『もしもし?おーい』
「……」
『え、あれ?通じてな……くはないよな、通話中だし。あ、もしかして間違ったか?』
「……国見だけど、何」
『あ、国見!?なんだよもー、早く返事してくれよ。かけ間違えたかと思ったわ』
「なんで俺の番号知ってんの」
『いや中学の頃登録したろ?』
「(……そういえばそんな事あったな)」
『……あんな事あったのに、俺の番号消さないでてくれて、ありがとな』
あんな事というのが “ あの日 ” の事を指しているのは容易に想像が付いた。だからこそ、それを承知した上で電話をかけてきたこいつに、正直少しだけ警戒した。
「それで、何の用」
『あー……いや冷静になったらなんで俺、お前に電話かけたんだろ』
「俺が知ってると思う?切っていい?」
『待て待て待て、悪かったから!……それで確認なんだけど、お前って今青城?』
「そうだけど」
『だよなー……その、ちょっとあんまり気分の良い話じゃねえけど、聞いてくんね?』
さっきから水瀬は何かを躊躇するような、要領を得ない事しか言わない。結局何の用だっていうんだ。
『その……橋下の、事なんだけど』
「……あ゛?」
その名前を、アイツの名前を水瀬が言った瞬間、自分の中にドス黒い何かが湧き上がってきた気がして。あり得ないくらい低い声が己の喉を通過した。
俺と、水瀬と、A。嗚呼、役者は揃った。この面子から考えられるは一つのみ。フラッシュバックされる “ あの日 ”
「お前……また何かする気か?」
例え何も出来なくたって、せめてあの日を繰り返すような事だけは……これ以上Aを泣かせるような事は、死んでもしたくない。
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花見っ子(プロフ) - アップルキャンディさん» 最初から!?すごい嬉しいです!なら余計に更新ものすごく間が空いてしまってすいませんでした……このシリーズだけは絶対完結させます。お付き合い頂けたら幸いです。 (2020年11月30日 21時) (レス) id: f68b48dadb (このIDを非表示/違反報告)
アップルキャンディ(プロフ) - 初めまして!シリーズ最初から読んでます!久しぶりに占ツク開いたら更新通知が来てて、コメントしたくなるぐらい幸せでした…。色々と拗らせてる国見ちゃん、読んでて苦しくなるほど好きです。無理のない範囲で更新頑張って下さい。 (2020年11月29日 18時) (レス) id: addc80a2b2 (このIDを非表示/違反報告)
花見っ子(プロフ) - ゆったーさん» そう言ってもらえるてとても嬉しいです!安心して書ける……更新頑張ります、コメント感謝です。 (2020年11月29日 14時) (レス) id: f68b48dadb (このIDを非表示/違反報告)
花見っ子(プロフ) - 端広コウさん» 急な逃走及び告知のない復帰にも関わらず、このようなコメントを頂けてとても嬉しいです。正直ちょっと泣きそう……更新頑張りますので、お付き合い頂ければ幸いです。 (2020年11月29日 14時) (レス) id: f68b48dadb (このIDを非表示/違反報告)
ゆったー - 綺麗で読みやすい文章!内容がしっかりしてて違和感がなかったです!ちょっとだけ見るつもりだったけど、凄いドンピシャで全部読んじゃいました(笑)キャラの性格と口調も掴んでて変に思わなかったです!更新楽しみに待ってます!長文失礼致しました (2020年11月29日 0時) (レス) id: d351a6af56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花見っ子 | 作成日時:2019年8月11日 20時