これが恋ではないのなら、【国見英】

《２１》 ページ28

「……」

「別に同情してほしいわけじゃない。でも単純に僕は君が羨ましいよ」



自嘲気味に笑った月島は「だから、せめてそんな君らには上手くいってほしいわけ」と言った。

アドバイス、こいつがそう言った意味がようやくわかった。



「君らにだっていろいろあるだろうし、実際いろいろあったらしいけどさ？言わなきゃ上手くいくものも上手くいかなくなるよ」

「それは、あいつと俺が相思相愛だった場合の話だろ？世の中そんなに上手くはない」

「……盗み聞きしてた上でそれ言ってる？」

「そうだけど？あいつが昔俺を好きでいてくれた事はわかったよ。でも今は？確証ないだろ」

「……馬鹿？」

「……」



月島は俺に対する配慮というものを知っているのだろうか？いやこれは知らないな。

馬鹿でいいさ、もうこの際。なんとだって言ってくれ。

確かにあいつが俺を好いていてくれたのは、さっきのでわかった。嬉しいと同時に酷く後悔した。なんであの時何もしなかったんだろうって。

でもそれは以前の話、じゃあ今は？



「……怖いんだよ」

「何が？」

「お前、Aに聞いたんだろ？俺があいつに昔何言ったのかとか。どうせまた俺は何かやらかすぞ」



そうだ、俺は今まであいつに何をした？

どれだけ迷惑かけた？

小学校の頃も、中学のあの日も。それに俺が知らないところでも何かあったかもしれない。



「また近付いて、また傷つけろって？もうたくさんだ、あいつに迷惑かけるのなんて」



なんでこんなほぼ初対面の奴に、弱音を吐いているんだろう。なんて情けないんだろう。

でも止まらない、今まで誰にも相談しなかった……いや、相談できなかったんだ。初めてちゃんと人に話しているわけで。

栓が抜けてしまったように、俺の口からは弱音や泣き言が漏れ続ける。



「お前わかんないだろ、好きな奴を自分で傷つける感覚なんか。しかも故意にじゃないのに。なあ笑えるだろ？普通に話すこともできないんだ、お前もさっきの見たろ？言いたいこと１つも言えないで八つ当たりして……ああ馬鹿らしいよな。素直になんてなったら、本当に何をしでかすかわからねえよ？」

「……」

「そんな俺に出来ることなんて、近付かないようにする事くらいだろ……なのにそれすらできなかった。じゃあ俺はどうすればいいんだよ」



言葉にして改めて思い知らされる。

どうして俺は、こうまで情けないんだ。

《２２》→←《２０》

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す