これが恋ではないのなら、【国見英】

《１１》 ページ18

そしてやって来たあの日(・・・)。

授業が始まる前、何の疑いもなしに水瀬に呼ばれるがまま付いて行って塾の玄関口に出て。



『そこにいる奴。お前のストーカーだぜ？』



そしたら、このザマだ。

意味がわからなかった。だから俺は固まった。Aも固まっていた。でもあいつは多分俺と少し違う理由で固まってた。混乱もあるけど、多分悲しいとかそんな理由。

だって話聞いてた限り、水瀬とそんなに仲悪かったわけじゃないんだろ？なのにこんな状況、混乱しないはずがない。

てかなんで水瀬は……



(……あれ？)



そこで初めて、何かに気付いた。というか思い出したに近い。

仲悪くなかった、つまり “ 仲が良かった ” ……

どこかで聞いた、そんなワード。



《 最近仲良くなったんだけど、実は割と前から好きだった奴でさ》



最悪の可能性が俺の中に生まれる。

つい数日前に聞いた、そのセリフ。間違いもない水瀬のセリフ。どうしてだか俺の中でそれが今と繋がりかける。

対して水瀬は、動けないでいる俺たちにペラペラと言葉を並べる。



『な、国見。こいつヤバイだろ』

『おい、みな

『だから、な？諦めろよ』



その一言が、俺の中の最悪な可能性を裏付けた。

多分水瀬が今までペラペラ話し続けていたのは水瀬の本心じゃない。思ってすらない言葉だ。じゃなきゃ、こんな顔しないだろう。

それで最後の一言だけは絶対に本心で。

“ 諦めろよ ”

数日前、こいつに俺が言ったこと。俺が好きなのがAであるということ。それに対するこの言葉にこの顔。



(水瀬が好きだったの、Aかよ)



ふと、Aの顔を見る。

そこには泣きそうな顔のあいつがいた。

ああ、見たことある、その顔。

小学生の最初の方の、竹内の時の顔。

今回のも、あの時も、全部全部……




(また、俺のせいだ)

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