鼓動_4 ページ44
『…な、…何…』
少しして、自身のそれから離された萩原の濡れた唇をぼんやり見つめながら、
Aは乱れた吐息とともに、言葉を零した。
「会いにきた、って…、言っただろ」
『そ、そう…だけど。…だったら、連絡くれたら良かったのに。
…お店の前にいるからビックリ…、しただけじゃない。
それに、急にこんな――』
「あの店にいるって言ってたから。
…会いにきた、だけだろ」
萩原の不満そうな、小さな声に、Aは困ったように口を閉ざした。
唇が離れた後、抱き合うでもなく、
唇とともに自然に離れる、互いの、”物理的な”距離。
15センチほどのその距離を、
互いに縮めようともしない、２人。
もう陽が落ちてしまった人気のない路地裏には、
少し離れた場所から聞こえるくぐもった騒めきが小さく聞こえるだけだ。
「…なのに、松田と仲良く店から出てくるし」
『な、仲良くって…。たまたま会っただけよ。』
「…勝手に帰ろうとするし」
『それは…、だって、会いにきてくれてる…なんて、知らなかったし』
自身に会いにきてくれた、という萩原に、
彼の不満そうなその表情に、
そして、先ほどの噛みつくようなキスに、
Aは気まずそうに、恥ずかしそうに少しずつ俯き始めた。
いわゆる、”嫉妬”というやつだろうか、などと考えてしまいそうになり、
それを払拭するように、小さく頭を左右に揺らすA。
「Aは、俺に近寄って来ねぇよな」
『…は？』
「…好きだって言われたはずだと思ってんだけど」
『…え？』
「キスは受け入れてくれんのに…、嬉しそうにしてる気もすんのに、
…くっついて来ねぇっていうか」
萩原とはあの夜だけでなく、これまで幾度と唇を重ねているA。
それは、彼の方からそうしてくるのを受け入れているという状況で、
自分からしたことは、一度もない。
当然、抱きつくようなことも。
それは、唇を離した直後も同様で。
普通は、
キスを交わした後、甘えるような仕草を見せたり抱き合ったりするものなのだろう。
好きな相手となら、それも当然なはず。
しかし、Aにはそれが出来なかった。
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (
レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです！(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：white12
| 作成日時：2019年12月12日 17時
