指名案件_2 ページ4
「彼は、強盗があった翌日に任意で聴取を受けていたのですが、その後の取り調べでかなり強引に自白を促されたと言い始めまして…」
ふぅ…と、やはりオーバー気味にため息をつく飯野。
『最初は否認していたんですよね。でも、急に自白を始めた。そして、一転、それは強要されたといい始めた』
「ずいぶんと主張が変わる被疑者ですね」
相変わらず真剣な表情の葵と、
いぶかしげな表情に変わる白石。
「…まぁ、そうなんですが…
ただ、指紋などの決定的な証拠はない事案ですし、自白が強要されたものなら証拠能力はない。
それに、自白を強要したという警察側の落ち度。これは大きな問題でしょう。ただ…」
ぎらっと目を鋭くさせて警察の落ち度を主張する飯野は、
一呼吸おいて、続ける。
「木本は、弁護は茅野法律事務所の結城先生に変えてくれ、と言ってきまして…」
『私、ですか…』
当然、木本と面識がある訳ではない。
特に関連も思いつかない。
なぜ、彼の口からわざわざ自分の名前が上がったのか理解しかねるといった表情で、
葵は少し視線を下に向ける。
「確かに、彼女はそういった案件も何度か担当していますが…」
苦い表情を浮かべていた白石が呟く。
『木本は私のことを知っていたということですか』
「どうやら先日の経済雑誌を見ていたようで」
と、これまで口を噤み静かに会話を聞いていたアシスタントの早川が口を開く。
「結城先生のコメントが載っていたでしょう。警察の違法な捜査や強引な取り調べに対して。警察や検事、弁護士、ともに、正しく真実を暴くべきだと。」
『あぁ…あの記事ですか。』
「そうです。あの記事を見ていたようで、貴方に変えて欲しい、と。」
確かに、葵はこれまで、
警察に強引な主張によって、不当な刑罰を課されようとしていた被疑者を救ったことが何度かある。
単なる冤罪、ということではない。
正しく取り調べや捜査が行われず、実際に何があったのか、真実が正しく明らかにされなければ、
課されるべき刑の重さも不当なものになる。
そうしなければいけない。
それは弁護士の責務であり、
そして、葵の強い信条である。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年7月1日 21時