警視庁にて_3 ページ14
「…あれ?部屋、分かりませんでした?」
ふと、高木の元気な声が降りかかり、
葵は肩を震わせる。
廊下で立ち止まってしまっていたため、
部屋が分からず待っていたと思われたようだ。
「…?何かありました?」
『いえ、すみません。ちょっと考え事をしてしまっていて。』
特に気にする様子もない高木は、
先ほど案内した部屋へと葵を連れていく。
「では、早速ですが、昨夜の―――」
襲われた時刻、
犯人や襲われることへの心当たり、
最寄駅に着いた時刻といつもの帰宅時間や帰宅ルート、
最近つけられていると感じたことがあるか、
など、葵に色々と質問を投げかけて情報を整理していく高木。
「あ、それと、貴方が男を取り押さえたというのは本当ですか?松田さんの話だと…」
『え?あぁ、そうですね…』
「貴方が、ですか。武道か何かの経験が?」
『はい。まぁ、職業柄恨みを買うこともありますし、護身のためにも。』
その言葉に嘘はなかった。
弁護士という職業柄、やはり、何かと恨みを買うこともある。
武道を嗜み始めたきっかけは別のところにあるにせよ、護身として役立っていることは昨夜の出来事が物語っていた。
ストーカーに遭っている覚えは無い。
犯人とも面識はない。
帰宅ルートは同じにせよ、遅くなる日も多いが、帰宅時間は日々まちまち。
という葵の話から、
葵自身をターゲットにした可能性は低そうではあるが、まだ男が何も供述していないことから、例の通り魔と同一犯かどうかは断定できない、と高木は言った。
「まだ、貴方が狙われた可能性が0という訳ではありませんから…
どうか、くれぐれも気をつけてください。」
そう言って、事情聴取に出向いてくれたことに礼を言い、高木は葵を見送った。
高木に軽く会釈をし、葵は小さく息を吐く。
警視庁。
何度か来ているとはいえ、この建物には全く慣れない。
いや、慣れたくも無い。
厚い、厚い、見通すことのできない暗闇のようだ、
葵は高くそびえ立つ警視庁のビルを眺めながら、そう思った。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年7月1日 21時