またね、の続き<K.N>

・ ページ42

・





6月


梅雨特有のジメジメとした空気のせいで、最近はなんだか気分が浮かない



風磨は映画の出演が決まって忙しいみたいで

連絡は取り合っているけれど、あまり会えていない


前に言っていた日帰り旅行も当分出来そうにない


そんな状況に本人はどう思っているか分からないけど、私は上手くいっていないと思っている




私はというと、4月下旬にオープンしたお店も上手く軌道に乗って上手くいっているけれど

健人と会ってからというもの、本当にやりたいことをやる為にどうしていけばいいか

ひたすら考えてはいるものの一向に答えは出ていなくて、気分は沈むばかり



こんな気分はお酒で流してしまおう


そんなことを思って、ふと目に入ったバーに入った





｢いらっしゃい｣



私以外にお客さんはいなくて、目に入ったカウンターに腰掛ける


メニューを探すけど、見当たらない

どうしたもんかと思っていたらマスターに声をかけられた



｢うち、メニュー無いんだよ

お客さんを見て、その場でオリジナルカクテルを提供するの｣


｢なんかお洒落ですね｣



小洒落たイケオヤジ、って感じの風貌のその人は

慣れた手つきでリキュールをシェイカーに注いでいく



｢はい、

時には何も考えないことも大事だよカクテル｣


そう言って目の前に綺麗なカクテルが出される



｢え、それこのカクテルの名前ですか？｣


｢そうだけど｣



当たり前って顔をしたマスターには申し訳ないけれど、さすがに名前ダサすぎじゃない？

不審に思って一口飲んで見ると、スッキリとした味わいが広がって

なんだか本当に何も考えなくても良いのかもしれないと思ってしまう



｢人生、なんとかなるから

そんなに浮かない顔してちゃダメだよ｣



マスターは全てを見透かしたような表情でそう言う



｢なんで分かったんですか？私が行き詰まってること｣


｢目を見れば分かっちゃうよ｣


｢、、変なの｣


｢ね？不思議だよねー

まあゆっくりしていきな｣



よく分からない人だけど、この人のおかげでなんだかスッキリした

お店の雰囲気も好みだし通うことにしよう



そう思っていたら、扉が開く音がして

目を向けて見れば


｢あれ、先客いたんだー

って、Aちゃん？｣


目をまん丸にして驚いている健人がいた

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す