魔王ヴァステリス ページ41
もうやめた。魔法で勝とうなんて思ったからこんなに痛くて苦しい思いをしないといけなくなった。初めからスキルを使っていればこんな事にならなかったんだ。
「な、何をし、ゲホッ」
ノヴァーレが口から出す血は止まらない。ボタボタと垂れて吐き出していく。1回で吐くのがこの量ならまだまだ続くな、なんて思いながら出来るだけ痛くないようにゆっくり立ち上がる。
「僕のスキルで、お前の血を外に集めてる。魔族にも血が流れるなら、なくなったらどうなるのかな?」
死ぬのだろうか、それとも何かの力で死なないのか。今までのモンスターも燃やせば死んだ。ならば、きっと。
「くそッ、ゴホッゴホッ」
殺してしまう。いいさ、あいつはファル達も僕のことも傷付けた。人殺し。違う!僕は正しいことをしている!本当に?
感情がぐちゃぐちゃだ。本当にこのまま殺していいのか、という気持ちと、与えた痛み分の罰だ!と怒る気持ち。分からない。どちらが正しいのかなんて。
吐き続けるノヴァーレを見る。血の水溜まりが出来ていて、自分の喉からひゅっと音がした。
「ここまでやられておるとはのぉ。ほれ落ち着け小童」
一瞬吹いた風に目を閉じる。またノヴァーレに顔を向けると、紅くてツンツンした長髪の大男が立っていた。深紅の瞳がノヴァーレを見て、またAを見つめた。
「もうこやつに戦意はない。掛けた魔法を解いてくれんか」
「あな、たは・・・・・・」
「儂は魔王ヴァステリス。ノヴァーレの父じゃ」
ノヴァーレは次期魔王だった。父親、これが本当の魔王、ヴァステリスの姿だ。
「ち・・・・・・ち、うえ」
ノヴァーレは血を吐き続ける。ひゅー、ひゅー、と浅い呼吸も大変そうだ。
「魔法を解いてくれんか」
解き方なんて知らない。どうしよう!スキルはどうやって解いたらいいんだ!
「――――落ち着け。結んだ紐を解くイメージをしろ。深呼吸をして、肩の力を抜け」
この声!
「ファル!!」
ファルはにこりと笑って髪を撫でた。ファルの服をギュッと握り、言われた通りイメージしつつ呼吸を落ち着ける。
「解けた。よく出来たな」
目を開けるとノヴァーレが地面に倒れるところだった。ヴァステリスが何かを唱えるとノヴァーレは一瞬で消えた。おそらく、瞬間移動の魔法だろう。
「さて、少し話をしようかの。小童、ファグゲイル、そして人の王子よ」
ヴァステリスの目線の先には、エル王子が立っていた。
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埋夜冬(プロフ) - 千々さん» 最後までお読み下さりありがとうございます!!!もう本当にありがとうございます!超絶励みになってました!(語彙力) 主人公くんに万が一飽きると魔王様が攫う気満々ですが、その前にエル様がガードしにきます。玩具を取られたくないからね!!ガードが多いね主人公! (2021年3月13日 11時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 完結おめでとうございます! とても面白かったです! やっぱりファルの主人公に対する執着がいいなあと思いました。そしてファルが主人公に飽きる日は来ないらしいですが、もしそんなことになったら私が主人公を守りにいきます(( 本当にお疲れさまでした! (2021年3月13日 11時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 千々さん» ありがとうございます!!作者は更新時間まばらですが、これからも精一杯頑張らせていただきます!今後もよろしくお願いします! (2020年8月26日 12時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 続編おめでとうございます! とても楽しくお話を読ませていただいています! 楽しいお話の中にちりばめられた謎がとても気になって……! これからも読ませていただきます! 続きを楽しみにしていますね! (2020年8月26日 8時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ふわふわありすさん» ありがとうございます!予定では続編でちゃんと終われるはず!頑張りますのでお楽しみに!コメントありがとうございます! (2020年8月26日 5時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2020年8月25日 23時