全てが、桁違い ページ22
ジメジメとした空気が肌にまとわりつく。きつく閉じていた目を開けると目の前には大きな門があった。まるでお城にあるような、大きな門。
｢魔王城･･････ッ！！！｣
オリオンが憎しみの籠った声で、うめくように言った。これが、魔王城？
辺りは赤黒い。血のような色の空。重い雲が覆っていて、地面は割れている。真っ黒な木が生えているのが目に入った。おどろおどろしい場所だ。
ふとファルを見ると今までにないほど緊迫した顔をしていた。怖がっていると言った方が正しい。そんな顔だ。ファルがこんなにも怖がるだなんて。
｢何でオレたちがここに･･･｣
｢ゴーレムを倒したことで転移魔法が発動した｣
傷口を押さえて立ち上がるラナストにヴィーシャが答える。彼女も震えていた。これから戦う魔王は、それほど恐ろしいやつなのだと今更になって理解する。
｢これは･･････。ハル、ラナストはどう？｣
エルがいつもとは違う、引きつった笑みを見せた。
｢傷口は塞ぎました。ですがやはり戦闘は･･････｣
｢いいよ。これだけ桁違いの魔力を感じるんだ。援護できるだけ十分｣
エルは思い切り手を握り、そして弛めた。ここまで来たんだ。もう倒すしか選択肢を残していない。怖がっている暇などないのだ。
｢へぇ、ゴーレムを倒して怪我人がこれだけとはね｣
コツ、コツ。
ゆっくりと足音が響く。
｢今回はなかなか見込みがありそうだ｣
コツ、コツ、コツン。
足音が止まった。皆が声の方を振り向き、目を見開いて固まる。
黒い髪は漆黒の闇。紅く光る瞳は血のようだ。だがハイライトがない。紅い闇の色。
魔力云々に疎いAでも分かった。全てが、桁違いだと。
｢魔王･･･ッ！！｣
オリオンの声に籠る憎しみに、Aは身震いした。オリオンにとって、魔王は父の仇。今にも噛みつきそうだ。瞳孔が開ききっている。
魔王はオリオンを一瞥して視線を逸らす。それはまるで『雑魚と話すことはない』と言っているように感じた。オリオンも同じだろう、怒りで呼吸がおかしくなっている。
｢ノヴァーレ･･････様･･････｣
ファルの小さな声に魔王―――――ノヴァーレが振り向く。
｢そこで何をしているのかな、ファグゲイル｣
ひゅっ、とファルの喉が鳴った。Aは状況が飲み込めなくて、ファルとノヴァーレ様と呼ばれた魔王を交互に見つめる。
ファルと魔王。ファルが『様』と付けたということは―――――――･･････。
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埋夜冬(プロフ) - 千々さん» 最後までお読み下さりありがとうございます！！！もう本当にありがとうございます！超絶励みになってました！(語彙力) 主人公くんに万が一飽きると魔王様が攫う気満々ですが、その前にエル様がガードしにきます。玩具を取られたくないからね！！ガードが多いね主人公！ (2021年3月13日 11時) (
レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 完結おめでとうございます！ とても面白かったです！ やっぱりファルの主人公に対する執着がいいなあと思いました。そしてファルが主人公に飽きる日は来ないらしいですが、もしそんなことになったら私が主人公を守りにいきます(( 本当にお疲れさまでした！ (2021年3月13日 11時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 千々さん» ありがとうございます！！作者は更新時間まばらですが、これからも精一杯頑張らせていただきます！今後もよろしくお願いします！ (2020年8月26日 12時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 続編おめでとうございます！ とても楽しくお話を読ませていただいています！ 楽しいお話の中にちりばめられた謎がとても気になって……！ これからも読ませていただきます！ 続きを楽しみにしていますね！ (2020年8月26日 8時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ふわふわありすさん» ありがとうございます！予定では続編でちゃんと終われるはず！頑張りますのでお楽しみに！コメントありがとうございます！ (2020年8月26日 5時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作成日時：2020年8月25日 23時
