50冊目 ページ10
「ただいま」
あれから少し話した湊はすぐに帰ってきた。
「おかえりなさい、湊先生。お父さんには会えましたか？」
家では心配そうな顔をしたAが待っていた。トラウマが戻ってないのか心配して湊の帰りを待っていたのだ。
「うん、会えた。ちゃんと話してきたよ」
ホッ、とAの顔が緩む。こうやって自分のことのように考えてくれるのは嬉しいと感じる。
湊は話してきたことをAに語った。
「もっと話してきて良かったんですよ？」
「いや、まだやっぱり慣れない。でもだんだんと距離を埋めてくつもりだよ」
父との確執が無くなった湊の表情はいつもと違って見えた。良かった、とAは思う。家族は大事な存在だ。一番はじめに愛を感じる場所だから。
「容態は？退院はいつになるんですか？」
すると湊は首を振った。
「父さんの精神かなりボロボロみたいでさ、完全に治ることはないらしい。外に出てもいいけどいつパニックになるか分からないって。それが分かったとき、母さんはすぐに離婚していなくなったみたい」
あ……、とAの顔が歪む。また湊を傷つけないように言葉を探しているようだ。
「もうそんなに気にしないで大丈夫だから。今はとにかく話す方が大事だろうし、母さんは会えないって分かってた。会いたくないのは向こうも同じだろ」
だから父だけでいい。むしろ十分だ。
「それとさ、話してきた。BL作家してること」
湊はちゃんと話したのだ。BLを書いていることを。それなりに食べていけていることも。
Aは驚いた。湊のBL小説は人気だが、BLという括りに偏見を抱いている人はまだ多い。
「何て言ってましたか？」
「知ってたって」
え？
「『テレビで最近聞くから調べてみたら、湊だったからって驚いた』って言われた。昔父さんがカウンセリングした患者さんのなかにもそういった人はいたから、偏見はないってさ」
湊が熱中しているなら、その道は正しい道だ。死ぬ気で頑張りなさい。
そう父は言った。そういうところは昔から変わっていない。
「だから俺、小説だけは頑張るよ。他は駄目でも小説だけは死ぬ気でやる」
だから、いつか専属ではなくなるその日まで。
「Aにもたくさん頑張ってもらうからね」
朝日のような笑顔はAの胸をキュンと苦しくさせた。朝日は眩しいくらいに輝いている。
「任せてください！」
だからAも負けないくらい、向日葵のような笑顔で頷いた。
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埋夜冬(プロフ) - 白澤 晴夜さん» ありがとうございます！返信遅れてごめんなさい！キュンキュン出来ていたなら良かったです(*´ω｀*) (2019年12月14日 13時) (
レス) id: 87a5a46f37 (このIDを非表示/違反報告)
白澤 晴夜(プロフ) - 完結おめでとうございます！！もう最後までキュンキュンしながら読ませて頂きました〜！！この2人には、これからも永遠に幸せでいて欲しいです！！これからも頑張ってください！応援してます！ (2019年12月13日 22時) (レス) id: 5742d2c832 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゼロさん» 返信遅くなりすみません！ドキドキしていただけたなら作者も満足です！次回作もよろしくお願いします！ (2019年12月7日 10時) (レス) id: b51b60f8c3 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 唳桜さん» 返信遅くなりすみません！可愛く書けていたなら良かったです！次回作も作ったのでぜひ読んでみてくださいね！この作品を読んでいただきありがとうございました！ (2019年12月7日 10時) (レス) id: b51b60f8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ - とても面白かったです。僕自身とても好きなジャンルで読んでてとてもドキドキしました！完結おめでとうございます。これからも応援しています。頑張って下さい(^▽^)/ (2019年12月1日 11時) (レス) id: aaae856515 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作成日時：2019年8月10日 22時
