stage.30(side.Urata) ページ42
オーナーはソファーに腰掛けた後、気まずそうに頬を人差し指で掻きながら、口を開いた。
「えーっと、もう分かってるかもしれないけど…Aです」
『…ああ』
二人の間に沈黙が落ちる。Aさんはいつものような余裕は無く、そわそわとこちらを窺っている。
「うらた君…怒ってる？」
『いや、別に』
「でも、眉間に皺寄ってる」
Aさんにそう指摘されて気が付く。怒ってはいない、ただ…
『…何で言ってくれなかったんだ、って思って』
「え？」
『オーナーが危険だっていうのは理解してるし、俺は…いや、俺たちはAさんからしたら『拾い物』なのかもしれないけど。でも、俺はAさんに頼ってほしかった』
「うらた君…」
驚いた顔をしたAさんの表情がふにゃりと崩れる。初めて見た幼い笑みに俺の胸は無意識に高鳴った。しかし、次の彼女の言葉に俺は言葉を失う。
「ふふ、すっかり格好良くなったね。流石、四天王のリーダーと言われるだけあるね」
俺の気持ちになど全く気が付いていない様子で、彼女はふわふわと笑う。その無邪気さに妙に腹が立って、 思わずソファーから立ち上がった。
「っそうじゃなくて！俺はアンタの事が好きなんだよ…！だからっ…！」
そこまで口にして、ハッとする。今、俺は凄い事を口走ってしまったのではないだろうか。慌てて口を噤むも、目が合ったままのAさんの顔がみるみる赤くなっていくのを見て、後戻りできないのだと悟った。
「あ、ありがと、う…？」
顔を真っ赤にして、しどろもどろになる彼女に愛おしさが溢れてくる。今日一日で彼女の新たな一面を沢山知れている気がする。しかもこの真っ赤になって俺をチラチラと上目遣いで見てくる彼女は俺しか知らない、そう思うと自然と頬が緩んだ。
『なあ、Aさん』
「は、はい…」
『"願い事"の権利、使っていいか？』
「………」
『Aさんの事、教えてほしい。どんな事が好きで、どんなものが嫌いか。あと、どうしてそんなに運が良いのか、とか』
「…そんな事でいいのですか？」
『俺にとっては大切。好きな人の情報は少しでも多く知りたいもん』
「な、ま、また、す、好きって…！」
直球でものを言えば、面白い程に顔を赤くするAさん。どうやらこの人にはストレートに伝えた方が良さそうだ。
「何があっても絶対俺が守ってやる。だから、俺の恋人になって？」
そう彼女に囁けば、真っ赤になりながら彼女は小さく頷いてくれるのだった―――
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 526人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紫苑(プロフ) - リリさん» ちゃんと変換できたみたいで良かったです！ ご不便をおかけして、失礼しましたm(__)m 頑張ります！ありがとうございます！ (2019年10月14日 0時) (
レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリ(プロフ) - ちゃんと、名前が出来ていました！名前で呼ばれるのが嬉しいです(￣∇￣*)ゞ次も頑張ってください！ (2019年10月13日 18時) (レス) id: 3c3ec4405a (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - リリさん» リリさん、ご指摘ありがとうございます…！こちらの設定ミスです…修正いたしましたので、名前が変換されるはずです！ 応援ありがとうございます！頑張ります！！！ (2019年10月11日 21時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリ(プロフ) - 最高です！登場人物の、名前を変える設定で名前を入れても、変えれないのですが……どういうことでしょうか……これからも、頑張ってください！ (2019年10月11日 15時) (レス) id: 3c3ec4405a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫苑
| 作成日時：2019年10月7日 13時
