stage.17 ページ24
―ふわふわと揺られている感覚。
―まるで雲の上みたい。
―ああそうか、きっとこれは夢だ。
―ならば、どうかこの夢よ醒めないで。
―息苦しい現実に引き戻さないで。
「A、起きてくれ」
『っ！！』
強く肩を揺らされ、意識が一気に浮上する。視界に映ったのは、心配そうな顔をした金城さん…とその後ろは事務室の天井。
どうやら先程のふわふわとした感覚は金城さんに運ばれていた時のものらしい。
『ここは…』
「事務室だ。怪我は無いか？」
『はい、大丈夫です』
「…それなら良かった」
心底ほっとした表情の金城さんを見て、この人にここまで心配をさせてしまったのだと罪悪感に襲われる。
『金城さん、ご迷惑をおかけしてしまい、すみません』
「いや、君に何も無くて本当に良かった。…怖かっただろう？」
当たり前のように伸びてきた手を、咄嗟に私は避けた。今この手を受け入れてしまえば、「オーナー」の仮面が剥がれてしまう。
『…まだ、弱音を吐くわけにはいきません』
「A…」
『大会が終わったら、頭、撫でて下さい』
「…ああ、勿論だ。君の気が済むまで頭を撫でてやろう」
頭に伸ばしていた手を、私を起き上がらせる手に変えて、金城さんは私を起き上がらせてくれた。
もう私たちに言葉は必要無かった。私は「オーナー」を演じ、金城さんは「部下」を演じる。
トラブルなど、何も無かったように。
「オーナー、まだ着替える時間はあるが…」
『着替えます』
「承知した。…支度が整ったら部屋から出てきてくれ」
そう言い残し、金城さんは部屋を出て行った。扉が閉まった途端に感じた息苦しさに見て見ぬふりをして、私は洋服を一式脱ぎ捨て着替えた。
(私は「カジノ SHUFFLE」のオーナー…誰にも負けない、屈しない)
気合いを入れる為の頬を叩く代わりに、胸元のリボンをキツく縛る。
ふと顔を上げれば、鏡の中には朝方よりやつれた自分の顔。手早く化粧を直せば、何とか元通りになったと思う。
『…ゲームを、始めましょう』
意識して口角を上げれば、鏡の中の女性は優雅に微笑む。そう、これが正しい姿なのだ。
『金城、会場へ案内して』
「…！ええ、参りましょう」
不安や恐怖を押し込めて、頂点に君臨する傲慢で優雅な女のふりをする私は道化のように滑稽だろう。
だが、自分すらも騙せない人間が駆け引きで勝てるはずがないのだ。
(私に勝ちたいなら、私の本性を暴いてみなさい、優勝者さん？)
そう願いながら、私は会場へ足を踏み入れた。
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紫苑(プロフ) - リリさん» ちゃんと変換できたみたいで良かったです！ ご不便をおかけして、失礼しましたm(__)m 頑張ります！ありがとうございます！ (2019年10月14日 0時) (
レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリ(プロフ) - ちゃんと、名前が出来ていました！名前で呼ばれるのが嬉しいです(￣∇￣*)ゞ次も頑張ってください！ (2019年10月13日 18時) (レス) id: 3c3ec4405a (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - リリさん» リリさん、ご指摘ありがとうございます…！こちらの設定ミスです…修正いたしましたので、名前が変換されるはずです！ 応援ありがとうございます！頑張ります！！！ (2019年10月11日 21時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリ(プロフ) - 最高です！登場人物の、名前を変える設定で名前を入れても、変えれないのですが……どういうことでしょうか……これからも、頑張ってください！ (2019年10月11日 15時) (レス) id: 3c3ec4405a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2019年10月7日 13時
