*ありがとう、ございます ページ10
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顔が熱い。耳まで熱を帯びていて沸騰しそうなぐらいの温度まで上がっていそう。
坂田さんに呼び捨てされた。
ねえ、坂田さん。なんで私のこと分かるの?
嬉しい。彼の声、彼の笑顔に心まで侵食されそうで。でもそれがいい、だなんて。
「……そのまま、呼び捨てがいいです」
蟻みたいに気づかれないくらいの声の大きさ。でもちゃんと確実に言ったから。恥ずかしいから聞こえてませんように。
お願いは届かず。坂田さんは目を丸くして私を視界に映した。綺麗で光のような瞳は私の全てを吸い込みそうだ。
「じゃあ、Aで、いく」
坂田さんが恥ずかしそうに言った。そう言ってくれた瞬間どうしようもなく嬉しかった。
「俺も!俺も!」
「坂田だけズルい!センラも!」
「うらたさんもセンラ…まあ、俺も呼び捨てしたいけど」
星のような輝きを放つ彼らの瞳はしっかりと私を見つめている。曇り1つない純粋な視界。私は魔法にかけられた素敵な時間を過ごしているんだなぁ。
「あ、ありがとうございます。呼び捨ていいですよ…」
「ありがとう!タメでいいからねA」
「あ、じゃあ遠慮なく、うらたさん」
うらたさんはご満悦みたい。でも坂田さんは不思議と不満そうな顔をしていた。
「俺だけやったのに…」
坂田さんが口を動かして何か言っていた気がしたけど気の所為か。
頬を膨らませて子供に見えた坂田さんはセンラさんと志麻さんに簡単にいじられて更に頬を膨らませる。それが可愛くて思わず志乃里と笑ってしまう。
「坂田、拗ねてるねぇ」
「Aおるねんで?」
「拗ねてないもん」
言い方が、可愛い…今すぐ動画撮りたい。今さっきの言葉録音して目覚ましボイスにしたい。絶対夜更かししていても起きれる。やばい、欲しいんだけど。
少しだけかもしれないけれど、4人に近づけた気がした。心には触れれそうにない距離だけどこのままがいい。
「ありがとうございます。坂田さん。きっかけを作ってくれて」
談笑する皆の後ろで精一杯の笑顔で言っておいた。勿論、誰も見ていなかった。
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くりぬこ - お話とても楽しく読まさせて頂きました!!こんな事が現実になればどれほど嬉しいことか…まあないですけどね(笑)これからも更新楽しみにしています! (2019年3月28日 16時) (レス) id: 8b048cd6e4 (このIDを非表示/違反報告)
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